昭和期までの日本ではヤクザと警察は、『歴史的な侠客が地方自治(労働者管理・争訟調停)に果たしていた役割』や『裏社会(重犯罪の容疑者)の情報源の必要』もあって持ちつ持たれつの関係だった。ヤクザのそもそもの起源は戦国期の既成秩序からはみ出した異端者である『カブキ者』とされるが、江戸期に生まれた『武士を模倣した侠客集団(食い詰めた牢人・町奴・博徒の非合法な武装集団化)』が近世ヤクザの原形とされる。
『公権力(暴力独占の政治機構)に対する反抗と模倣』という二重基準を持ちながらも、各藩が財政難に陥った幕末には十手を渡されて警察活動の一部を委託されたりもした。江戸時代末期の混乱期(藩の衰退期)には、多数の子分を抱えるヤクザの親分が実力行使の警察業務を委託された。
これは田舎の武州から出てきて、武士に憧れていた近藤勇・土方歳三が局長と副長を務めた無頼の剣客集団『新選組』が、幕府から『京都守護職・旗本』に任命されたのにも似た構図であり、新選組の『裏切り・離脱』に対する即時切腹の罰則を定めた『局中法度』なども極めてヤクザ的なものであった。
というよりも、新選組や侠客集団(ヤクザ)の側が武士の規範性を模倣したのだから、『謀反・脱藩(主君に対する不忠行為)』が死罪に相当するという原理原則に沿ったものと解釈できる。義理・忠誠を欠いたり大きな失敗をすれば『指を詰める』という慣習も、単なる謝罪や補償だけでは不義理(規範逸脱)は許されることがないという武家社会の慣行(裏切り・失敗に対する他の家臣・子分への見せしめ)を模倣したものである。
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山口組直系の『英(はなぶさ)組』の組長・津留英雄容疑者(77)が、ウェブ上の誰でも閲覧できる公開掲示板で『半グレ(不良集団)の実力排除』を示唆した暴力行為処罰法違反の容疑で逮捕された。77歳の年齢でインターネットを使いこなし、自分の政治・社会に対する論評を書くブログまで開設するような先進的な組長として知られた人物だという。
「半グレ排除」ネット掲示板で組員に“指示”した山口組直系古参組長の“ITリテラシー”
パスワード認証もかけない『公開の掲示板』で犯罪の証拠になりかねない書き込みをしたのは迂闊だが、『半グレごときが大きな顔をして歩く世の中。困ったことです。それも、これも「暴排条例」なる珍奇な法令の副産物である。せめて、わが城下町だけでも断固!これを「許しまじ」である』という内容は、暴力団の縄張り意識や上下関係が通用しない『不良集団の増加(暴力団の承認を得ないシノギ=犯罪収益の増加)』を思わせるものである。
東京ではクラブの店内で人間違えの殺人事件まで引き起こした『関東連合』という半グレ集団が話題になったこともあるが、ヤクザの組員でもなく堅気の一般人でもないが犯罪行為(暴力による威嚇を伴う行為)を生業とする『半グレ(不良集団)』が増加しているという。暴力団と比べると半グレ集団は、警察にその集団組織を登録されてマークされているわけではないので、『規制の強度』が弱くて『活動の自由度』が高いという有利さがあり、一部の地域では暴力団よりも派手な動きをして多くの収益源を確保しているとされる。
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29歳の容疑者(介護福祉士)が老人福祉の仕事に従事している理由も、『入所者や家族の役に立ちたい』という思い以上に、『仕事を通した自分の存在価値や仕事ぶりを認めて褒めて欲しい』という承認欲求に重点があるようにも感じられるが、3年前の事件を起こした特別養護老人ホーム『フラワーヒル』は、容疑者が資格だけを取得して実務経験があるという履歴の虚偽申告をした上で(後に実務面の虚偽申告が発覚してわずか1週間ほどで職場から依願退職をさせられているが)、初めて介護福祉士として働き始めた職場だったという。
仕事上の自分の存在価値を示すために、自分でその仕事の需要を生み出して注目を浴びたいという犯罪の類型は実は珍しいものではなく、今までにも消防署隊員が自分で放火をして出動回数を増やしたり、警察官が虚偽の事件をでっちあげて捜査体制を準備したりした『職業上の狂言と承認(注目)にまつわる事件』は散発的に発生している。
統計的には、年齢的に若い人(働き始めての年月が浅い新入隊員・社員)が引き起こすタイプの犯罪に分類することができ、消防隊員や警察の狂言事件では『当初の使命感・やり甲斐・承認欲求』を満たすような火事・重大犯罪がずっと起きない虚しさや退屈感に耐え切れずに、放火をしたり事件のでっち上げをしてそれを解決する自己像をイメージして興奮を味わうという心理が見られる。
この29歳の介護福祉士は傷害致死で『他者の死』を引き起こしているという意味でより悪質性は高いが、今まで良く言われていた『看護師・介護士の感情労働の疲弊・限界による虐待リスク』が、異なる方向(ストレスや疲労の限界ではなくもっと自分を認めて欲しい、注目して賞賛して欲しいという自己愛の欲望の肥大)で発露されたタイプの事件だと言えるだろう。
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埼玉県春日部市の特別養護老人ホームで、2010年2月に高齢の入所者3人が死亡したが、当初死因は『病死(心不全)』で片付けられており、肋骨骨折などの暴行の痕跡に気づくことはできなかったという。
終身滞在型の特養では80代以上の高齢者が多いために入所者の病死・自然死(老衰死)は珍しいものではないと思うが、瀕死の危篤状態でもなかった3人が日にちを開けずに立て続けに死亡し、その発見者がすべて2日前に就職したばかりの容疑者だったことは偶然にしては符号が合いすぎている感じはある。
しかし、普通は老人ホームの同僚が虐待や殺害をしたという疑いを掛けるはずもなく、報告を受けた上司・同僚はそういった殺傷事件の犯罪の可能性さえ殆ど考慮しないだろうから、暴行現場の目撃や流血など明らかな異状といった状況証拠がなければ、『あなたが虐待(暴行)を加えて死なせたのではないか』という訊問のような行為が所内で行われることはなく、発見した状況の簡単な聴き取りで終わるだろう。
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日本人の多くは現状ではグローバル人材にはなれないし、日本企業の多くもグローバル企業としての市場開拓やブランディングに大きなビハインド(人材不足も含め)を負っている。
これまで日本国内の『市場(内需)』にかなりのボリュームがあったため、日本人の大多数はわざわざ言葉が通じず社会インフラの整備も遅れている外国に出て行く必要がなかったし、日本企業の多くは国内のトップ企業(インフラ事業者)としてシェアを占めるだけで十分な売上・利益を上げることができ、他社との競争環境も今ほど厳しいものではなかった。
人・モノ・カネが国境を越える経済のグローバル化と日本の超高齢化社会の到来による市場縮小が不可避な既定路線(賃金下落の圧力要因)としてのしかかることで、世界のどこにいっても働けて暮らせる『グローバル人材』の夢が膨らんでいる。しかし、話し言葉としての外国語(英語・中国語など)をある程度身につけたとしても、『日本で働いて得る賃金』以上の賃金を外国に移住して稼ぐことは簡単なことではないし、そもそも欧米の先進諸国の失業率は日本よりも高いという問題がある。
グローバル人材「無理」…高校・大学生の半数超
グローバル化をチャンスに変えられる理想的なビジネスパーソンとして想像されている『グローバル人材』というのは、ハーバードやオックスフォードなど世界ランキング上位にあるような大学を卒業して、『多国籍企業の幹部候補・国連組織など国際機関の職員・バイリンガルな専門職や研究職のキャリア』などに就職するトップエリートを指しているようだが、より現実的な視点で考えるならば『海外に行っても何とか働いて生活できる人材のレベル』をグローバル人材として受け止めるべきだろう。
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『大人の社会(会社)』で、弱い立場にある相手を追い込むいじめ・嫌がらせのパワハラが蔓延している。いじめ・嫌がらせを自己正当化するような大人が後を切らないのに、『子どものいじめ問題』に真剣に対応できるはずがないと思わせられる労働相談統計の結果であるが、2012年のパワハラ相談件数は5万1670件(同12.5%増)にも上るという。
パワーハラスメントとは、相手が逆らえないと推測される『職業上の地位・権限・命令』を悪用して、自分よりも下位の弱い立場にある従業員に対して、『人格否定(能力否定)の暴言・叩いたり蹴ったりの暴力行為・違法なサービス残業(長時間労働)の強要・言うことを聞かないと解雇や不当待遇をするぞとの脅迫』をすることであり、従業員に不当に『精神的・肉体的な苦痛』を与えることである。
職場にいづらくして間接的な解雇を行うためにパワハラが行われることもあるが、その多くは『上位者のストレス・過労状態・不平不満』の八つ当たりのストレス解消であったり、権力関係(立場の違い)を強調するデモンストレーションであったりする。
とはいっても、全ての職業上・職位上の下位者がパワハラの被害者になるわけではなく、『キャリアアップの転職をすることが困難であることが自明な人材(絶対にその仕事を辞められないという危機感が強いが職能上のニーズは大きくない人材)』や『性格的に抵抗力や自己主張が弱そうに見える相手(いくら暴言暴力を浴びせても反抗してこないと見られた相手)』がターゲットになりやすい。
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