第二次産業(工業・製造業)の現業部門の作業では、労働時間と賃金の相関関係は強くなるが、それは大量生産のモノづくりでは『1時間当たりの生産量・原価を差し引いた利益』を計算しやすいからで、その製品の需要・注文が未成熟な成長市場にある限り、労働者が働けば働くほど製品の生産量が増えて生産性(売上)が上がるからである。
この場合の、生産管理体制(利益を上げられる仕組み)の責任は経営方針・需要予測・工場稼働率を決定する経営者にあり、労働者は経営陣の決定した方針に基づいて、『時間単位当たりの生産量』を黙々と増やして売上・利益を増やし続ける役割を果たす。第二次産業の労働者は、『基本給』という最低ラインの給与をベースにしながらも、働いた時間に応じた賃金(残業をすれば時間数に応じた割増賃金)を受け取る権利を有する。
製造業・建設業などの現場で主に身体(有限の体力)を使って働く人たちは、労働時間と賃金との相関関係を崩せば、資本家や経営者から『増加した利益の部分』を搾取されるだけではなく、『人生の時間コスト・健康リスク』だけが大きくなって一方的な損失を受けるだけだから、政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)が提案するような『労働時間と賃金が相関しない給与制度』に同意する理由がない。