映画『悪夢ちゃん The夢ovie』の感想

総合評価 84点/100点

これから起こる事件や出来事を夢で見ることができる『予知夢の能力』を持つ引っ込み思案な小学生の古藤結衣子(木村真那月)と、サイコパスっぽい部分もある先生の武戸井彩未(北川景子)を中心にしたコメディサスペンス。

ドラマシリーズからのスピンオフだが、個人的無意識が夢に投影されるとしたジークムント・フロイトや集合無意識(普遍的無意識)が夢のイメージや元型になって現れるとしたカール・グスタフ・ユングの『夢分析の理論』を前提にしながら、コミカルタッチの推理小説のような面白さを持つような展開が考えられている。

クラスにやってきた転校生の渋井完司(マリウス葉)を、みんなが転校してくる前から夢で見たことがあるといって騒ぎになる。大人びた雰囲気の渋井完司はすぐにクラスでリーダー的な役割を果たすようになり、父親(六角精児)が路上の屋台でほそぼそとハム巻を作っている女子生徒の井上さんをみんなで応援して、そのハム巻を大ヒットさせ店舗を持てるまでに発展させていく。だが、そこには『成功させてから突き落とす(個人の努力で運命を変えることなどできない)』という渋井の自己理論の証明のための策略があった。

クールなイケメンの渋井は、“悪夢ちゃん”こと古藤結衣子の夢に、理想の男の子の象徴である『夢王子』として登場してくるが、この『夢王子』の原型は武戸井先生の夢にでてきていたGacktが演じる夢王子である。夢を研究する心理学教授である古藤の祖父の下で、野心的な助手を勤めていたGacktは、ドラマ版で古藤結衣子の父親であることが明らかにされている。そして映画版ではそれ以前のクールなキャラから転じて、結衣子との父子関係を自然に認めてふれあいを楽しんでいたりする。

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映画『アメイジング・スパイダーマン2』の感想

総合評価 93点/100点

新しい『スパイダーマンシリーズ』では、このアンドリュー・ガーフィールドとエマ・ストーンのコンビの恋愛関係の変遷と葛藤の表現手法が見事であり、単純なアメリカンヒーローものというよりは、VFXを駆使したアクション映画と感動的な恋愛映画をハイブリッドした魅力を持っている。

アメリカを離れてオックスフォード大学に留学することが決定したグウェン・ステイシー(エマ・ストーン)に対して、スパイダーマンのピーター・パーカー(A.ガーフィールド)は『グウェンのことを大切に思うならもう近づくな』というグウェンの父の死の間際の遺言に呪縛されており、グウェンとの関係を高校卒業を契機に静かに終わらせるべきだという考えに傾いていた。

つれないパーカーの態度の変化や別れの宣言に際して、グウェンも『お互いに別々の道を歩かなければならない時が来たのね』という認識を持つようになり、自分がかねてから目標にしていたオックスフォード大への留学と新たなキャリアを模索し始める。ニューヨークの治安維持のためいずれにせよイギリスにまではついていけないという口実に頼るパーカーは、グウェンのオックスフォード行きを、彼女との付き合いや思いに踏ん切りをつけられる好機と捉えるようにした。

卒代を務めた学校一の優等生であるグウェンの前途洋々たる未来に対し、ニューヨークの凶悪犯罪や悪党との戦いに明け暮れることをやめられないスパイダーマンの自分が関わり続けることの危険性や不利益を思うと、フェードアウトして別れることが最善だという結論に行き着く。

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映画『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』の感想

総合評価 87点/100点

『アベンジャー』シリーズの最新作で、キャプテン・アメリカが第二次世界大戦中に死亡したはずの親友のバッキー(ウィンター・ソルジャー)と予期せぬ再会をして戦うことになる。ナチスドイツ(作中ではハイドラ)の残党のマッドサイエンティスト、冷戦時代の旧ソ連の人体改造実験など、アメリカがナチスドイツやソ連と対立していた歴史の遺恨が現代にまで波及しているような作品の構造を持つ。

第二次世界大戦後から現代まで冷凍保存されていたキャプテン・アメリカ(血清によって改造された超人兵士)であるスティーブ・ロジャースは、『アメリカの歴史性・戦史・勇気』を生身で体現して経験している象徴(第二次世界大戦の生ける伝説)のような存在として設定されている。

見ようによってはアメリカの愛国心喚起のプロパガンダ性のある映画でもあるが、アメリカ人から見たアメリカ人が好みそうな正義・勇気・歴史観のあり方の類型に『自己犠牲・献身性・忍耐性・防衛のための攻撃』が含まれている辺りは、アメリカだけではない日本や他の国にも通じる普遍性が織り込まれている。

キャプテン・アメリカは、星条旗の星印を模したヴィブラニウム(架空の破壊不可能な金属)の盾を武器としているが、超人的な能力は『一般人の能力+α』といった程度で相当に強いが完全に無敵な兵士ではなく、時に打ち負かされたり時に死にかけたりもする。

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映画『サファリ』の感想

総合評価 72点/100点

アメリカ人のカップルたち6人が、大自然の動物に間近で接することのできる南アフリカのサファリツアーに参加する。シマウマやチーター、象などの野生動物を見ながら進んでいた一行だったが、観光用に認められている国立公園の内部では楽しみにしていたライオンの姿を見つけることができない。アメリカ人たちはせっかくアフリカにまで遥々やってきたのに、ライオンを見れないことに対して不満や慨嘆の声を上げ始める。

現地のガイドが『ライオンがどうしても見たいのであれば、本来は禁止されている猟場のエリアにまで特別に連れて行く』と提案し、自分は何度も猟場を通行した経験があって道を知悉しているので何の問題もないという。何人かの女性は、観光用に整備されていない獣を狩るための猟場に踏み入ることに躊躇するが、ガイドの保証と男性陣を中心とした賛成者の多さに押し切られて、手持ちの地図には載っていない猟場のエリアに踏み込んでいく。

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