日本社会の非冒険的カルチャーと官僚主義・長期雇用(生涯安泰を理想とする予定調和の静態的システム)

本多勝一(ほんだかついち)の『日本人の冒険と「創造的な登山」』は1970年代に書かれたものだが、日本社会あるいはマジョリティの日本人がなぜ『冒険的・探検的な試み』を嫌って恐れるのかを冒頭で検証していて興味深い。

そして、この死ぬかもしれない人間の身体的限界(エクスペディション)に迫るような冒険・探検を『無謀・迷惑かつ無意味なチャレンジ』として嫌う基本的な性向は、現代の日本にまで連続していると見て概ね間違いはない。

今でも『山の遭難・海の事故』などに対して様々な角度から罵倒や嘲笑が投げかけられるのは常であるし、『初めから危険な場所に行かなければいいのに・おとなしく普通に暮らしていればいいのに』という考え方は一般的なものでもある。

最初に取り上げられるのは、1962年に単独で小型ヨットで太平洋横断(アメリカ渡航)を果たした堀江謙一青年だが、日本のメディアや文化人の論評では堀江の扱いは『太平洋横断の超人的偉業を成し遂げた』ではなく『両国政府の許可を得ていない密入国で犯罪ではないか(冒険を評価するよりも違法行為や無謀な挑戦を戒めるべき・アメリカからも非難されて逮捕されるのではないか)』というものであった。

だが、アメリカは不法入国した堀江謙一を逮捕するどころか、勝海舟の咸臨丸によるアメリカ来航以来の日本人による太平洋横断の快挙として賞賛、堀江を『名誉市民』として認定して好意的なインタビューが行われた。アメリカのマスメディアや行政の反応を見た日本の政府やマスメディアの対応は180度転換して、『人力による太平洋横断の功績』を評価するようになったが、日本社会だけでは堀江謙一が評価されることはなかったと思われる。

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映画『ルパン三世』の感想

総合評価 89点/100点

キャスティングが好みに合っていると感じられるかどうかで評価の分かれる映画。個人的には『小栗旬のルパン三世・玉山鉄二の次元大介・綾野剛の石川五ェ門・黒木メイサの峰不二子』はすべて漫画のイメージに合っている感じで面白かった。

小栗旬は声優のような声芸でもいける俳優だったんだな、アニメ版のルパン三世に近い声色を使っているが、コミカルな愛嬌のあるキャラクターでありつつ、それほど違和感がなくて良かったと思う。

もんちっち風の髪型もだが、原作でルパンが愛用している濃い赤のビロードのタイトなスーツも似合っている。ちなみに映画が始まる前の『映画泥棒の犯罪CM』も、『こそこそちんけな盗みをしてるんじゃねぇぜ』のルパン三世バージョンになっていた。

声色という意味では、銭形警部役の浅野忠信もアニメを意識した声作りをしているのだが、銭形警部のほうが声を似せるのは難しそうで、小栗のルパンほど声の個性化には成功していない。しかし、浅野忠信の銭形警部も、作品世界にフィットした役柄になっており、要所要所で存在感を示している。

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映画『トランスフォーマー ロストエイジ』の感想

総合評価 78点/100点

前作『トランスフォーマー ダークサイドムーン』では、シカゴの都市でのディセプティコンとの大激戦が見所になっていた。このロストエイジはシカゴ決戦から3年後の世界が舞台になっている。

オプティマス・プライムをはじめとする“オートボット”は、地球を襲撃した悪の機械生命体“ディセプティコン”と同じ種族と見なされるようになった事から、人類とオートボットの関係は急速に悪化しつつあった。

反オートボット派の政治家やCIAは、KSIというロボット企業と癒着して『墓場の風』と呼ばれる戦闘部隊を派遣し、『オートボット狩り』の作戦を秘密裏に遂行している。墓場の風の猛烈な集団攻撃を受けて、オートボットは次々と捕獲され解体されていき、機械生命体の謎を解くためにその金属素材が採取され分析されている。

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