人類の戦争の歴史・心情と憲法9条の平和主義:デンマーク軍人フリッツ・フォルムの戦争絶滅受合法案

憲法9条は『平和主義・戦争放棄・軍隊の不保持』を定めた憲法の条文であり、各国が相互に憲法9条と同等の内容を持つ憲法を定めて遵守すれば戦争はなくなるでしょうが、『現状維持・現行の秩序を望まない国家や勢力』は、武力による現状変更・秩序の組み換えに正義(自衛・悪の排除の大義名分)を感じるので容易には受け容れないでしょう。

現代では武力の必要性を語る人は、『侵略・利権の拡大』ではなく『自衛・外敵の脅威からの防衛』の観点から語りますが、そこには自分たちが軍隊を持たず戦争をしなくても外国は軍隊を強化して戦争を仕掛けてくるかもしれない(仮に9条を導入しても見せかけだけで遵守しないかもしれない)という『相互不信』があります。

■「憲法9条」平和賞に期待=自民・谷垣氏

憲法9条と自衛隊を持つ日本は、日本人の大多数にとっては『戦争をしない平和な国』として認識されていますが、中国・韓国・北朝鮮からは『9条に違背する自衛隊の正当化+外国を油断させるための見せかけだけの平和憲法(表層的な戦争の反省と不戦の誓いをいつか覆す右翼的な準備計画の進行中)』ではないのかという穿った見方をされてしまうこともあります。

恐らく中国や韓国が憲法9条と同等の憲法条文を採用して、軍隊を自衛隊という名称に変更しても、右派をはじめとする日本人のかなりの割合の人は同じように『外国を油断させるための見せかけだけの平和憲法』に過ぎないと断定して警戒感を変えないでしょう。

自衛目的にしか使わないという但し書きがついていても、大量破壊兵器・通常兵器と訓練された軍隊が実際に存在している以上、もしかしたら『自衛以外の目的(自衛・主権侵害を大義名分にした言いがかり)』にもその兵器と軍隊を使ってくるのではないか(現在の経済的社会的問題と連動することで過去の歴史的な遺恨・不満やナショナリズムの感情が鬱積したり爆発したりするのではないか)という不信感は簡単には払拭できないからです。

現実の戦争は政治指導者・軍の上層部・官界財界の協力者(扇動者)・軍需産業の利得者は死なずに、地位も権限も名声もない『一兵卒(雑兵)』が死ぬわけですが、この一兵卒が教育や慣習、共同体倫理、メディア、自尊心によって『仮想敵の脅威・憎悪』をたぎらせたり『ナショナリスティックで物語的な自己犠牲精神』に耽溺したりするので、戦争ができる体制・憲法でいったん戦争が始まる流れが確定するとその流れに抗うことは非常に難しくなります。

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岡山県倉敷市の女児監禁事件と“妄想体系・自尊心の肥大・人生の挫折感”が絡む被告の心理的要因

不気味な欲望や幼稚な妄想を感じさせる事件だが、藤原武被告(49)は博士号取得の大阪大学大学院で就職に挫折してから大学の知人とは没連絡となり、離婚後に更に社会・他者から遠ざかったともいう。

「夫婦の時間楽しんだ」=女児支配、日記で克明に―49歳男、7日初公判・倉敷監禁

就職が難しい人文系(哲学科)の博士課程ではあるが、一種のポスドク問題による就活の失敗と自尊心の崩れ、女性関係の不遇、脱社会的環境による現実認識の異常から生じた事件か。

勉強次元のエリートが挫折後に自意識と生き方を立て直せかった事が背景にあると思われるが、勉強・仕事での成功欲求(条件面の付加価値)と理想の女性が結びつき過ぎていた結果でもある。

藤原被告は学生時代には女っ気のない真面目一辺倒な人だったという印象が語られるが、それは20代まで女に興味・欲望がなかったからではなく『学歴・仕事での成果を上げれば理想の女に相手にして貰えるという通俗的な希望』 で(みんなが遊んでる時に)今必死に頑張れば後で良いことがあるという人生設計(先憂後楽の戦略)があったからだろう。

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“アップルペイ”など電子決済サービスの増加と規格のガラパゴス化

ネット通販の拡大やクレジットカードの発行枚数の増加などにより、現金決済ではない電子決済をする人・機会が増えているが、アップル社もiPhone6から『アップルペイ』というNFC(非接触型)形式のおサイフケータイのような電子決済サービスを導入することになった。

日本では当面アップルペイに対応した読み取り装置が店舗に設置されないため、アップルペイで買い物をすることはできないが、先行するアメリカで十分な規模にまで決算額が増えてくれば日本でもある程度は普及する可能性があるだろう。

電子決済サービス・電子マネーは僕も結構頻繁に使っているが、おサイフケータイは一時期ドコモのDCMXのクレジットカードと紐付けられたものを使っていたが、スマホを使い出した頃くらいから本体を取り出すのが面倒になって、通常のクレジットカードか各店舗専用の電子マネーしか使わなくなった。

アップルペイやおサイフケータイは確かに、通常の財布を完全に持ち歩かなくても良いくらいに使える場所が多ければ非常に便利だと思うが、現状では『おサイフケータイが使えない店舗・サービス』も多いので、クレジットカードと比較しても使い勝手が良いとは言えない。

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香港の行政長官選挙デモ(普通選挙要求)と中国共産党の思惑:一国二制度の形骸化

近代香港の歴史は、イギリスからアヘン輸入を強要される不条理な言いがかりをつけられた『アヘン戦争(1842年)』における清王朝(中国)の屈辱的な敗北と永久割譲によって始まった。第二次世界大戦中の1941~1945年には、軍事侵攻した日本軍の軍事行政下に置かれたこともあるが、戦後は再び1997年まで香港はイギリスの統治下に置かれた。

香港の人々は、英国流の近代啓蒙主義の民主的な政治制度や自由主義・人権思想、資本主義の経済活動の影響を強く受けることになり、中国の主権(中国共産党のイデオロギー・統制教育・強権支配)が及ばなかった約150年の間に『東洋の真珠』と呼ばれる巨大金融・貿易センターへと拡大的に発展していった。

香港、週内に公開対話へ 政府と学生団体が合意

香港は日本の東京(東証)を凌駕する巨大金融センターであり、ニューヨークとロンドンに次ぐ金融の規模を誇り、経済活動の自由度と税率の低さ・経済規制の少なさは世界トップレベル、世界各地から莫大な投資マネーと多国籍企業の出先事務所が押し寄せてくる。

一人当たりGDPは日本よりも高くグローバルエリート層が集積するが、近年貧富の格差が拡大傾向にあり財政状況も悪化しているため、中国本土からの資金援助に頼る割合は増えているとも言われる。

中国も香港の経済競争力の重要性を認識しており、香港の経済力と対外イメージを保つためには『香港の経済活動・人民の行動の自由度の保障』が必要だと考え、香港はマカオと同じく中国の一国二制度の対象になっている。香港は民主制・軍事・外交を除いた高度な自治権を認められた『特別行政区』であり、特に経済・財政・金融・起業の分野においては中国本土と切り離された相当に高度な自治(自由度)が認められている。

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北海道南幌町で発生した女子高生による母・祖母の殺害事件:しつけと虐待、家族関係の風通し

しつけと称する虐待(暴力的体罰・家からの締出しや隔離・恐怖を伴う精神的萎縮)の問題はあるが、暴行・殺害に発展する前に『家族関係の悪化・負の感情の鬱積・会話不能』の兆候は必ず出てくる。

<北海道祖母と母殺害>高2女子「しつけ厳しく逃れたく…」

親の子供に対する威厳と恐怖は異なる。過度の暴力や罰則によって子供を恐怖させたり激怒させたり従属させたりする状況は『親が子に慕われている・子が親の注意に納得している・親子で話し合いができる』わけではなく将来の精神疾患・人格障害・復讐(犯罪行為)・絶縁などの潜在要因を子供時代に積み重ねているだけである。

『親が好かれているか嫌われているか』も親子関係の質に関わるが、しつけの必要性を強調する人は『嫌われるくらい(近づきにくい関係)が良い』と考え、信頼関係を強調する人は『好かれるほう(仲良く語れる関係)が良い』と考える傾向がある。しつけ重視は舐められるのを恐れ、信頼重視は対話不能を恐れる。

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S.キルケゴールの婚約破棄(宮廷愛の純化)と神の愛(無条件性)へのベクトル

『死に至る病』を著したセーレン・キルケゴールは、哲学史では実存主義哲学のパイオニアといった位置づけに置かれるが、キルケゴールは神と単独者である人(私)が向き合おうとするプロテスタント的な信仰者でもある。『死に至る病』という書名そのものも、キリスト教の新約聖書『ヨハネの福音書』に由来するものであり、その副題は『教化と覚醒のためのキリスト教的、心理学的論述』となっている。

『死に至る病』とは自己の存在根拠を喪失するという『絶望』であり、『実存(自己の意識・存在価値を認識し評価する存在形式)』として存在する人間は誰もが絶望せざるを得ないが、絶望からの究極の救済は自我を捨てきった宗教的段階において為されるとした。

キルケゴールのプロテスタント的な単独者としての思想性がどこから生まれたかには諸説あるが、有力な仮説の一つはキルケゴールが『肉体のトゲ・大衆との分離(特権意識)』によって、当時交際していた17歳のレギーネ・オルセンとの婚約破棄によって『キリスト者(普遍者)への宗教思想的な傾倒』が強まったというものである。

キルケゴールは24歳の時に、14歳のレギーネ・オルセンと出会って一目惚れしたというが、現代であればロリコン傾向であるが、10代で結婚する者も多かった1837年の時代背景を考えれば珍しいことではなかったのだろう。レギーネが17歳の時に婚約して18歳になる直前に婚約破棄をした。その理由が『肉体のトゲ』という抽象概念であり、キルケゴールの病跡学(パソロジー)の研究によると肉体のトゲというのは、彼の先天的な身体疾患(慢性脊椎炎・てんかん)か性病の梅毒の可能性があるとされる。

キルケゴールは異性関係では潔癖な男であり、婚約していたレギーネとも一回も肉体関係を持つことは無かったが、人生でただ一回だけその交際期間中に娼館を訪れて娼婦を買ったことがある。

キルケゴールが婚約破棄の理由とした『肉体のトゲ』と並んで語られるのが『懺悔者・大衆の生活様式からの分離(労働・結婚に裏打ちされたまっとうな市民の生活・幸福からの思想的離脱)』であるが、懺悔者というのはこの娼館に一度行ったことを指しているのではないかと言われる。彼はその宗教的な罪悪によって何らかの感染症に罹患したのではないかとの恐れを抱いていたともいう。

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