関越道のツアーバス事故で懲役9年6ヶ月の実刑判決。時代のマスメディアの報道姿勢

関越道のツアーバス事故は、自ら請け負った違法な労働条件(バス車体・運転手の登録手続にも法的な不備がある状態)によって過労状態に陥っていた河野化山(こうのかざん)被告が、居眠りをして猛スピードで防音壁に突っ込み、車体が真っ二つになるほどの損傷を受けた見た目にも衝撃的な事故だった。7人が死亡して、38人が負傷する自動車事故としては非常に大きな被害を出した。

<関越道事故実刑>「ある程度納得したが…」遺族、笑顔なく

自動車事故は年々減少を続けており、交通事故の死亡者がピークだった1970年代の交通戦争ともいわれた1万6千人台と比較すると、現在は飲酒運転厳罰化・危険運転関連の法改正の影響もあり4700人を割り込むまで激減している。現在が最悪の交通事故の状況というのは当たらないが、人々の意識としては『悪質な交通事故が増加したという印象』も強く、このことは凶悪犯罪が低い発生件数で推移しているのに、『治安が悪化しているという印象』ともつながっている。

1970~1980年代頃までは、日本は高度経済成長期にあり自動車の売上・税収と普及率が伸びるモータライゼーションは、『裕福な中流階層の増加を反映した先進国化(経済成長・労働意欲につながる欲望の原動力)』でもあったから、いくら自動車事故やその被害者が増加していても、被害者心理を代弁するような形の報道姿勢をマスメディアが取ることはなく、事故の発生と犠牲者数が淡々と報じられることが多かった。

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“週末婚・月末婚”といった同居しない結婚(通い婚)と同居する従来の結婚との異同

結婚すれば一緒に寝食を共にする共同生活をするのが当たり前という常識は、その多くを『性別役割分担』『子育ての協働性』『配偶者の排他的な独占性』に依拠しているが、ずっと一緒に同居することによって得るものもあれば失うものもある。

『一緒に住まないのであれば結婚する意味がない』という保守的な意見は、男性であれば『衣食住をはじめとする身の回りの世話を常にしてもらいたいという欲求(男性にモテるというか男好き・恋愛脳な妻であれば浮気防止なども含む)』、女性であれば『家族の絆を分かりやすい同居生活で確認したいという欲求(女性にモテるというか女好き・恋愛脳な夫であれば浮気防止なども含む)』が根底にあることがやはり多い。

結婚しても自由な生活を保証する「週末婚」

相手のためや相手の利便を思っての『同居の結婚』、自分が見返りを求めずして相手にして上げることだけを純粋に楽しめる同居の結婚であれば、夫婦関係が同居によって好ましくない影響を受けたり、喧嘩の原因が生まれることはないはずだが、そこはやはり特別な悟りの境地には達していない生身の人間である。

『自分だけが相手に良くしてあげていて、その見返りとなるものが不足しているように感じる状況』が続けば、不機嫌になったりそれとなく不快な動作になったりすることがないとは言い切れず、一緒に住んでいれば別居している時よりも『相手がしてくれて当たり前と思う水準』が知らず知らずに上がってしまいやすいのである。

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映画『LIFE!』の感想

総合評価 92点/100点

雑誌『LIFE』の写真管理部門で16年間働くウォルター・ミティ(ベン・スティラー)は、毎日同じように会社と自宅を往復する冴えない日常生活を繰り返しながら、マッチングサイト(会員制の出会い系サイト)で恋人を探している。

マッチングサイトで狙っている女性は、同じ出版社で働く同僚のミシェル・メリハフ(クリステン・ウィグ)だが、ウォルターは自分に自信がないため意中のミシェルにまともに話しかけることができない。

ミシェルの好む男性のタイプは『勇敢で行動力があり、冒険心に満ちている人』だが、ウォルターは自分の願望や欲求不満を妄想世界で満たしてぼんやりする習癖があり、最近もこれといった新しい体験や冒険的な活動はしていない。

マッチングサイトの自己プロフィール欄の体験談・アピール文も空白になっているので、ミシェル以外の女性も誰もアプローチしてこない状況なのだが、空想の中ではいつも勇敢なヒーローや危険を恐れない冒険家となってミシェルに情熱的で魅力的な告白をしたりしている。

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映画『ローン・サバイバー』の感想

総合評価 89点/100点

敵地に潜入するアメリカ軍の危険な特殊工作任務を遂行するネイビーシールズの精鋭たちが、苦痛と恐怖、疲労、不快に限界まで晒されしごかれる映像から映画はスタートする。軍の各部隊から寄り集められた精鋭の多くは、過酷さを極めるネイビーシールズの訓練に耐えられずに自分で『屈服の鐘』を鳴らして脱落していき、最後まで残った隊員たちはその限界状況の共有体験から実の兄弟以上の強い絆で結ばれている。

アフガン戦争後の対アルカイダ掃討戦における一つの作戦の実話をベースにした作品。最後まで戦い抜く精神力を試されて乗り越え続けてきた4人のネイビーシールズが、アフガニスタンの山岳地帯で『死が避けられない銃撃戦の極限状況』に陥り、最新鋭のライフルを用いた決死の抵抗戦も虚しく、足場の悪い地形に慣れたタリバン兵の大軍に押されて次々に戦闘不能な深手を負わせられていく。その絶体絶命のアフガンの岩山での戦闘から、ただ一人のアメリカ兵だけがいくつもの銃創・骨折を負った瀕死の状態で生還した。

ストーリーといえばただそれだけであり、端的にはアフガン戦争における『タリバン掃討作戦』のアメリカの正義を称揚して、タリバンの残酷さとパシュトゥーン人(反タリバン勢力)と米軍の友誼を浮き彫りにする映画なのだが、アフガンの峻険な岩山で展開される戦闘を中心に、『戦争映画としての緊張感・臨場感(負傷の苦痛のリアリティ)』が抜きん出ている。

戦争シーンの迫力とネイビーシールズの絶望的状況での抗戦(戦闘ヘリ・アパッチの機銃掃射による支援を待ち焦がれる状況)に引き込まれて、一気に最後まで見てしまう作品世界の勢いがあるが、4人の隊員は銃撃による負傷だけではなく岩山・崖からの激しい滑落を繰り返して、全身が段階的にずたぼろに切り裂かれて満身創痍の状態になっていく。

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高齢化するひきこもりと学校の中退との相関関係:『学校・企業からの脱落者』を放置しやすい現代日本の雇用制度・労働市場の問題点

ひきこもりやニートが増加しやすく高齢化しやすい要因は、先進国全体に概ね共通するものであり、EU諸国では若年失業率が20~30%程度にまで上がって、南欧では約半数の若者が失業して何の職業経験やスキルも積み重ねられないままに中高年になっていっている。

現代日本におけるひきこもりの増加・高齢化の問題をどう捉えるか?:2

現代の先進国では、大学の教育制度が想定してきたような『ホワイトカラー(大手企業の総合職)の雇用のパイ』が大幅に減少しているにも関わらず、とにかく最低限大学だけは卒業しておくべき(無能・劣等ではないことのメルクマール)という親世代の価値観の共有で『大学進学率』だけは上昇を続けている、その一方で中小零細企業の雇用や非正規雇用の待遇は悪化を続けている。

日本の企業制度は学校制度の延長(学校を卒業した人たちが一斉に入社していき年次と経験を重ねる仕組み)として機能してきたが、基本的に『学歴と職歴との連続性+一定以上の職務経歴・実績の評価』とがスムーズにつながらないと、平均所得前後を稼げる働き方(ボーナスや昇給昇格の機会のあるサラリーマンとしての仕事状況)に適応することが困難になっている。

更に、『履歴書・職歴書(時間軸に沿ったキャリアの休みのない連続性)』に象徴される過去から現在までの自己のデータベースが、『自分の働き方・生き方が記録(格付け)され監視されているような強迫観念』を生み出しやすくしている。

そのデータベースに空白・落ち度があるように思い込んでしまう気弱な人たち(今までの人生履歴に対する周囲の目線や評価を気にしすぎる人たち)が、ひきこもりや無職状態から立ち直るきっかけを掴みにくくなっているが、履歴書さえ要らないバイトも多かった気楽な昔の時代と比較すると、『データベースの連続性と正確さの要請(過去に何をしてきたか・どんな経験を積んできたかの透明化)』はかつてないほど強まっている。

ひきこもりになる大きな理由の一つが『学校の中退』であるとされているが、このことは『学校制度の延長(学校を卒業して企業・官庁に○期生として入社するというコースの連続性)』として、昭和以降の大手企業(官庁)の雇用慣習や給与制度が作られてきたことを考えれば当たり前の現象でもあるだろう。

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現代日本におけるひきこもりの増加・高齢化の問題をどう捉えるか?:2

ひきこもりやニートでなくても、現代の日本人は最低限の仕事の選択基準をほとんどの人が持っているため、『肉体労働・販売や接客の雇用の量はあるが、求職者の希望に見合う仕事がない』といった状態が慢性的に続いている。

土木建設産業の労働需要は、東北の震災復興事業や東京五輪のインフラ整備、大手ショッピングモールやマンションの建設ラッシュもあって各地で不足が続いているが、土木建設業の肉体労働の経験がまったくない失業者が、そういった仕事に応募することはまずないし、仕事がないから試しにやってみるかという気分でいっても、肉体労働の負担(炎天下・寒冷化の気候)・独特の文化に適応できずにすぐにやめてしまう人が大半である。

現代日本におけるひきこもりの増加・高齢化の問題をどう捉えるか?:1

バブル崩壊期には、山一證券や北海道拓殖銀行を追い出されたそれなりの所得を得ていたサラリーマンが、他業種に転職して適応することができず自殺者まで出したが、『職業的アイデンティティの大きな方向転換や意識変革(自意識・自尊心の調整)』はそれまで働いている人たちであってもなかなか難しいところがあり、年齢を重ねれば重ねるほどに価値観や生き方が硬直して『今までとは違う自己像・働き方・給与水準』に適応できないリスクが高まっていく。

逆に、自意識や価値観、適応方略を短時間でスムーズに切り替えて、『今日は今日・明日は明日の気持ち(他人と自分を比較せずに自分にやれることから始めようとするこだわりのない意識)』で新しい職業生活やライフスタイルに楽しく適応していける人が、現代社会でもっとも前向きにサバイブしやすい性格や考え方を持っているとも言える。

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政治経済・社会・思想の少し固めの考察から、日常の気楽な話題まで!mixiの日記・つぶやきのログも兼ねてます。