東京都議選の自公の圧勝。参院選も自民が圧勝する可能性は高いが、その『憲法観に見る理念・楽観的な公約』には懸念も多い。

円高を是正して株価を一時的にせよ押し上げた“アベノミクス”の評価もあるが、理想倒れに終わった民主党政権の失策と失望によって、政権を取る前までは二大政党制の可能性があった『民主党』自身が自滅した恰好になった。

東京都議選:自民59人全員当選 第1党奪還 民主惨敗

都議選の大勝は自民党の支持が一挙に高まっているというよりは、少しでも『現実味のある政策・地に足の着いたビジョン』を出しているように見える政党が、もはや自民党しか見当たらなくなり、票を投じたいと思える政党のバライエティが失われたということ(政治への無関心)の現れである。

金融緩和・財政政策によって財政悪化は着実に進むことになるが、株式市場を刺激する以外には実体経済の成長戦略に説得力がないアベノミクスは、長期的には公的債務を積み上げていくつかの株式市場の好況の波を残すだけで失敗する恐れも強い。

自民党中心の保守政権への懸念は、財政再建・国民所得への還元率を無視した経済政策にもあるが、それと合わせて、個人の自由権を軽視して国家全体の秩序・規律の強制力を強めようとする『憲法改正の内容(米国追随の集団安保と権利規制)・人権感覚の低さ・対外政策(中朝の軍事的・領土的脅威論を煽っての防衛費増額)』なども、衆参で3分の2以上の多数派勢力を得た場合には現実的な問題になってくる。

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映画『ファインド・アウト』の感想

総合評価 77点/100点

侵入された男に拉致されて森林公園の奥地にある穴に監禁されたジル(アマンダ・セイフライド)は、何とか自力でその穴を抜け出して凍死寸前のボロボロの状態で保護された。だが、ジルには重症の精神病での入院履歴があり、『作話(エピソードの創作)』の虚言癖があったため、警察は女性連続誘拐犯に拉致・監禁されたというジルの証言を『虚言』と決め付けて信用せず、精神病の影響による自主的な失踪事件として片付けてしまった。

家族が突然行方不明になっても警察が動いてくれないという事例は日本でも相当に多い。犯罪行為に巻き込まれたという客観的な物証・目撃証言がなければ、成人の行方不明は『本人の意思による蒸発・失踪(連絡不能な状態)』として片付けられ、危険人物による拉致監禁であれば人知れず生命を奪われている恐れも高い。

アメリカの年間の行方不明者数(missing persons)は約70万人で、約8~9万人の日本の9倍近いアメリカ人が毎年原因不明の失踪・蒸発をしているが、その全てを捜索する余裕が警察にあるはずもなく、失踪した本人が自分で帰ってくるケースも多いが、十年以上にわたって音信不通の状態が続き生死が不明のままで終わってしまうこともある。

アメリカでは、今年も、近隣で誘拐された複数の女性が約10年間にわたって、容疑者の男によって住宅街の中で孤立した民家(空家のように見られていた釘打ちされた民家)に監禁された事件が明るみになったりもしたが、地域コミュニティの衰退によってこの種の偏執的で悲惨な事件は少なからず発生している。日本でも新潟少女監禁事件のように、母親と同居する一軒家でひきこもり状態にあった中年男性が、誘拐した女児を10年近く監禁したという信じられない不気味な事件もあった。

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映画『華麗なるギャツビー』の感想

総合評価 89点/100点

F・スコット・フィッツジェラルドの“The Great Gatsby”を映画化した作品。ジェイ・ギャツビー(レオナルド・ディカプリオ)の波乱万丈の純愛に生きた短い人生を、唯一の友人としてギャツビーと最後まで付き合うニック・キャラウェイ(トビー・マグワイア)の視線を通して描く。

ニックの自宅の隣に建っている宮殿のような豪邸では、毎日のように政財界の大物やハリウッドの名優、金持ちのドラ息子らが集まって、湯水のようにお金を使うド派手なパーティーが開催されている。豪壮な館の主人の名はジェイ・ギャツビーと呼ばれる青年大富豪だが、その過去の出自や実際の職業(お金の出所)は謎に包まれており、表向きはドラッグストアチェーンの事業の成功によって莫大な富を築き上げた人物とされ、政財界・警察の長官にまで通じるその幅広い人脈は『法の支配』さえ寄せ付けないような絶頂期にある。

1920年代のアメリカの株式市場の狂乱、禁酒法の反動による享楽主義の広がりの中、ジェイ・ギャツビーは人々の欲望を燃料にして有り余るほどの財産と地位を築き、5年前の目的を果たそうとする。ギャツビーが法律の網を潜ってリスクを顧みずに金持ちになった目的は、軍の青年将校時代には『身分・経済の格差』から近づけなかった初恋の相手デイジー・ブキャナン(キャリー・マリガン)と結婚するためだったが、既にデイジーはトム・ブキャナンという成功した実業家・ポロの選手と結婚していた。

英国紳士としての完全な教養と優雅な所作を身に付け、トム・ブキャナンなど及びもつかない破格の経済的成功を遂げたジェイ・ギャツビーには、デイジーをトムから奪い取る自信と計略があり、そのためにデイジーの又従兄弟である冴えない証券マンのニック・キャラウェイに近づいたのだった。

デイジーが本当は自分のことが好きだったのに仕方なくトムと結婚しただけなのだという確信によって、不遇な自分の心境を支え続けてきたギャツビーの最終的な目標は、デイジーにトムに対して直接『あなたのことなど、一度も好きだったことはない』と宣言させて別れさせること(過去を無かったものにする決定的な宣言と共にデイジーに自分を選ばせることでそれまでの嫉妬感情を清算すること)だった。

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“他人とのコミュニケーション”の面白さ・煩わしさ:共通点がなさそうな相手との雑談の苦手意識

職場で上司や同僚、取引先と『直接の業務以外の雑談(おしゃべり)』をする若者が減っているというが、関係性に合わせてやり取りをする『儀礼的なコミュニケーション機会』が社会から減ってきていることも関係しているだろう。

現代社会は『親密なコミュニケーションを取る範囲』を地域社会の顔見知りからご近所の隣人、近しい血縁者、同居の家族、親しい友人知人、付き合っている恋人などへと縮小するゲゼルシャフト化(利害共同体化)の傾向を示してきた。

話し方マニュアル本大ヒットの陰に「しゃべらぬ若者」の存在

それは『煩わしいムラ社会・儀礼的な人付き合い・噂話が生み出す世間体』から逃れたいという欲望と経済・技術の進歩がシンクロした必然の結果でもある。

ウェブ社会の発達やソーシャルメディアの浸透は、『自分の好きな人とだけコミュニケーションしたい(自分の好みや相性で選んだ相手とだけつながっていたい)』という個人の欲望を技術的に充足させやすくした。『好きでも嫌いでもない相手とのコミュニケーション機会』は限定的となり、『不快で嫌いな相手』はアクセスそのものが禁止(表示そのものがブロック)されたりもする。

お互いの状況や考え、気持ちについて頻繁に会話をする『プライベートな人間関係の範囲』はかなり狭くなり、携帯電話の普及によって『話したい相手』と『話したくない相手』との主観的(好き嫌い)な選別もより技術的に簡単になった。

自分にとって感情的なメリットや関係維持の必要性がないと思える他人と、なぜ話さなければならないのか(なぜ話題をあれこれ考えてあげなければならないのか)、自分がまったく興味のない話題や同意できない旧世代の考え方などをなぜ聞かされなければならないのかという価値観を持つ人もおそらく増えていると思う。

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21世紀の雇用環境で不可逆的に進行する“4つのトレンド”と“仕事に求めるもの(働く目的)”の絞り込み

この記事は、前回の記事の続きです。

若者の”自殺”が深刻、20~39歳各年代の死因は自殺が最多–就職・勤務で悩み

>>自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)は前年比2.2ポイント減の21.8%(男性32.4%、女性13.9%)。年代別に見ると、20歳代で自殺死亡率が上昇傾向にあるのに対し、40歳代以上では低下傾向にある。詳細を見ると、60代以上の自殺死亡率は26.9%、50代以上は29.9%で、1997年の数値(60代以上31.9%、50代以上31.6%)をいずれも下回った。それに対して、20代の自殺死亡率は近年増加傾向にあり、2009年には13.3%だったものが、2011年には24.3%、2012年は22.5%と高い水準が続いている。

>>若い世代の自殺は深刻な状況にあり、20~39歳の各年代における死因の第1位は自殺との調査結果が出ている(厚生労働省2011年「人口動態統計」)。国際的に見ても、15~34歳の世代で死因の第1位が自殺となっているのは先進7カ国では日本だけで、その死亡率も他の国より高いという。

20~39歳の年齢では『がん・脳卒中・心臓疾患』などの致命的疾患を発症するリスクが低いので、『自殺』が死因の上位にはなりやすいが、自殺死亡率の低い他の先進国と比較すると、『労働規範の強さ・中途半端な失業率(働いていない自分に全的に価値がないと思わせられる社会的圧力・世間体の影響)』や『再チャレンジの難しさ・社会福祉や就労支援制度の乏しさ』などの要因があるように思う。

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日本を含む先進国の若年層の雇用情勢・給与水準は当面改善しづらいが、日本は『労働環境・ブラック企業』の問題もある。

20世紀の後半には、『日本・アメリカ・EU先進諸国』に生まれてそれなりに勉強をして能力に見合ったエスカレーター型の就職をするだけで、世界的にはトップレベルの所得と生活水準が保障されるという『先進国の黄金時代』だった。

だが21世紀のグローバル化とウェブ社会の本格化を受けて雲行きが変わり、BRICsやVISTAに代表されるかつての途上国・新興国の産業成長の追い上げが急激となり、先進国が製造業のコスト競争に敗れて、コモディティティな第二次産業の国内雇用(特別な技能・資格がなくても平均所得を得られる雇用)が外部に流出する流れを止められなくなった。

大企業社員・公務員など一部の既得権に守られた業界の雇用は現状でも長期的に保障されているように見えるが、大企業であれば『国際競争・生産拠点(本社機能)の移転・グローバル人材登用』のリスクがあり、公務員であれば『財政危機・公務員制度改革のソブリンリスク』があるため、いずれの雇用でも自己の汎用的スキル(その組織の外部でも通用する何らかの特技実績・技術・資格)がなければ『終身雇用の安心感』を持ちづらくなっている。

ゼネラリストからスペシャリストの時代へが本格化し、就職した会社・役所の社内(役所内)キャリアだけで管理職にまで上がった人でも、リストラや想定外の懲戒で梯子を外されると本当に『代替的な同水準の正規雇用』が見つかりづらくなり、非正規のアルバイト的な働き方しかできなくなる不安は大きい。中国やインドといった新興国が、自然科学の基礎知識と実用英語の習得を踏まえたサイエンス教育に熱心に取り組み、『特定分野のスペシャリスト(英語で専門技能を活用できるグローバル人材候補)』を輩出することを大学教育の実利的目的に据えている所以でもある。

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