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『憲法9条』のノーベル平和賞への推薦とその有効性の考察:日本国内における憲法9条を巡る価値観の対立

『憲法9条』をノーベル平和賞に推薦することは、日本国が政策的・侵略的な戦争(武力による威嚇)を遂行しないと決めた最高法規を持つ立憲主義の国であることを世界に改めて示す効果はあるが、仮にノーベル平和賞を受賞したとしても『日本以外の国』に憲法9条のような平和条項を導入させる働きかけをしなければ、国際平和への貢献にはつながりにくいだろう。

ノーベル平和賞:「憲法9条」が候補に 受賞者は日本国民

憲法9条に対する誤解として、9条の平和主義(戦争放棄)は無抵抗主義で平和ボケだという誤解があり、外国から攻撃されたり侵略されたりしても無抵抗でやられるだけなのかという反論があるが、憲法9条の規定があっても自然権に由来する『個別的自衛権』までは放棄できない。

9条があっても、日本側の交渉・対話・検証の求めをあくまで拒絶する一方的な外国の攻撃・侵略・テロを排除するための自衛目的に限定された反撃は当然に許される。日本の領土を直撃しない北朝鮮の国威発揚のミサイル発射実験に対して、現状でも破壊措置命令は出されているが、9条の規定によって日本の側から『戦争・武力(軍拡・核武装)・集団安保』を盾にした要求・交渉・威嚇はしてはならないという国家権力の歯止めが効かされている。

戦後日本の平和と安全は『憲法9条』によってもたらされたものではなく、平和主義と戦争放棄、軍隊の不保持のお題目を唱えているだけでは平和・主権は維持できないという意見もある。

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選挙権年齢と成人年齢の18歳への引き下げについての議論

憲法改正の手続き法である『国民投票法』では、当初、法律の施行から3年以内に選挙権年齢を“18歳”に引き下げるとしていたが、民法との整合性や霞ヶ関の成人年齢の見直しに対する抵抗もあって、選挙権年齢の引き下げは見送られていた。

『選挙権』というのは未来の国政や国民生活に対する関心・知識・判断に基づく政治参加の権利であるため、政治・社会・生活にまつわる独立的な見識や判断力が備わっていることが暗黙の前提となっており(被後見人・知的障害者にも選挙権はあるので能力的というよりも関心があれば良いという形式的なものではあるが)、『選挙権年齢』と『成人年齢』は一致することが望ましく混乱も少なくなる。

国民投票法:改正施行4年後「18歳以上」に 自民了承

だが、明治時代に制定された民法の成人規定(20歳を成人とする規定)は、各分野の法律の規定や判断にも大きな影響を与えているため、成人年齢を20歳に変更すると、それと連動して『民法・少年法・刑法・刑事訴訟法』などの改正もしなければならなくなる。そのため、その大掛かりな法体系全体の見直しの作業コストを敬遠する勢力の抵抗は強くなっており、また18歳では成人にふさわしい判断能力や責任感が備わっていないのではないかという世論の反対もある。

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クリミア自治共和国がロシア編入を選択した住民投票の正当性と日本の対ロ制裁

EU加盟を巡るウクライナ情勢の混乱、親露のヤヌコビッチ前大統領の不正蓄財や政敵弾圧に象徴される政治腐敗によって、キエフを首都とするウクライナ全体は『EU連合協定調印』に大きく傾き、親EU路線に同調しないウクライナ内部のロシア人とのアイデンティティ対立が鮮明になってしまった。

言語・文化・歴史・価値観において、EUよりもロシアに親近感を感じるウクライナのロシア人達は、ウクライナ国内では少数派であるが、クリミア自治共和国など領域を限定すれば、ロシア人のほうがウクライナ人よりも多数派勢力を形成することができる。

クリミア自治共和国単独であれば、住民投票において『ロシア編入の賛成票』が過半数になる目算が強かったが、今回の住民投票では約6割のロシア人比率よりも圧倒的に多い9割以上のクリミア自治共和国の有権者が賛成表を投じている。

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所得税の個人課税から世帯課税への転換・配偶者控除の廃止の検討

安倍政権が所得税の税制改革で、課税単位を『個人』から『世帯(夫婦+働いている子など)』に転換したり、『子の扶養控除の積み増し』を検討しているという。女性の社会進出や就労率の向上が目的とされているが、累進課税制の所得税では『夫婦の所得合算に対する課税』は個人で納税する時の税率よりも税率が上がり、『実質の増税』になる可能性が高い。

195万円以下の所得に対する所得税は5%であり、個人単位なら課税所得が180万円同士の夫婦なら各自5%の所得税(合計18万円)だけで済むが、世帯単位で合算するなら年収360万となり20%の税率が適用されること(72万‐控除の427500=合計292500円)にまで増税されてしまう恐れがある。

また、従来は主婦や学生が単発のアルバイト(お小遣い稼ぎ)を繰り返しても年収38万円以下なら申告義務がなく無税であるが、世帯単位になると38万円以下(給与所得者の20万円以下)の小さな収入でも合算されて課税され税率が上がる可能性も出てくる。夫が年収400万だとしたら、世帯収入が438万とみなされるかどうかは分からないが(納税義務が生じる最低所得金額は個別に38万円で据え置かれる可能性もある)。

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予算(お金)はあっても使い切れない、仕事はあっても雇い切れない。

更に、モノはあっても売り切れない。これらは日本が直面している『豊かさの中の貧困・近未来の人材不足(人口減少)・価格競争(ダンピング)と平均所得の下落(中流崩壊)・仕事と消費の選好(選り好み)の強さ』を予見する現象である。

行政は収税と公的事業に『一切の無駄がないという建前・予算を減額する余地がないという組織の論理』によって、予算を使い切ることに対する半ば強迫的な義務感を持つことが常であり、予算が余って積み上がっていくことはなかなかなく何らかの公的事業・インフラ整備・備品購入などで調整される。

使い切れぬ復興予算 事業進まず基金化3兆円 被災3県

だが、岩手、宮城、福島の3県と各市町村の『震災復興事業』では市町村の復興ビジョンやそのための具体的な工程表・仕事の割り当ては描けていても、その実務を担って必要な予算を使う職員と労働者の絶対数が不足しているため、復興基金のお金だけが積み上がっていく。

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内閣総理大臣と『憲法解釈権』が結びつくと、『立憲主義・三権分立の歯止め』がなくなる。

内閣総理大臣に『憲法解釈権』があるとするならば、内閣総理大臣は旧帝国憲法下における主権者の天皇以上の権限を持つことになるわけだが(昭和天皇でさえ立憲君主であることを自認され天皇機関説を支持されていたわけで)、『憲法解釈を司ることができる個人の代表者』というのは英国のマグナカルタ以前の専制君主、市民の第一人者(民意の集積者)として月桂冠を被った古代ローマ皇帝のようなもので『近代化された国制・法制の否定』の願望のようなものである。

ブルボン朝のルイ14世は『朕は国家なり(朕を制約する上位法はない)』とのたまったとされるが、君主制への逆行は冗談にしても選挙で選ばれた政権党の代表者(首相)が、憲法解釈を自分の思想信条で左右して立法措置(政策遂行)までできるというのはいずれ時代錯誤な話ではある。選挙で勝っただけの政権与党が、イコール憲法原則の中身であるはずもない。

解釈改憲で安倍首相擁護=渡辺みんな代表

安倍首相は立憲主義の本質を理解していないという批判をされているが、首相は国会答弁において『国家権力を制約するという意味の立憲主義は、絶対王政時代のものであって民主主義の現代にはそぐわない・選挙による審判や大多数の国民の民意があれば、国家権力を立憲主義で制限する必要がない』という持論を語った。

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