『マタニティーブルー・産後うつ』の認知度は高いが、産後うつの自殺リスクについての言及や統計調査は今まで無かった。精神疾患の既往でリスクが上がるので、産婦人科と精神科の連携が必要になる。
妊産婦の自殺者数は10年間で63人で日本の自殺者数に照らせば少ないが、高齢の老衰・貧困や不治の病気を苦にした自殺と比べ、本人の精神的な混乱や意志の薄弱さの度合いが大きい。適切なメンタルケアやヒューマン・サポートがあれば『自殺を回避できた可能性』が高くその意味で積極支援の効果が期待できると思う。
『マタニティーブルー・産後うつ』の認知度は高いが、産後うつの自殺リスクについての言及や統計調査は今まで無かった。精神疾患の既往でリスクが上がるので、産婦人科と精神科の連携が必要になる。
妊産婦の自殺者数は10年間で63人で日本の自殺者数に照らせば少ないが、高齢の老衰・貧困や不治の病気を苦にした自殺と比べ、本人の精神的な混乱や意志の薄弱さの度合いが大きい。適切なメンタルケアやヒューマン・サポートがあれば『自殺を回避できた可能性』が高くその意味で積極支援の効果が期待できると思う。
新型うつ病増加の環境的要因としては、『社会的規範・家父長的権威の弱体化』や『個人の自由の範疇の拡大』などによる『理不尽・不条理・しごきに耐えられるストレス耐性の低下』も考えることができる。学校を卒業して仕事を始めるまでのメンタリティが文明社会の利便性・楽しみを享受するだけの『消費者意識』に固定されやすく、『生産者・サービス提供者としての意識(それに伴うストレス状況の繰り返し)』にうまく適応しづらくなっているという問題も指摘される。
新型うつ病の増加には、本人のストレス耐性が低かったり勤勉な継続性・義務意識にやや欠けていたりという要因も当然あると思うが、『消費文明社会の爛熟・拝金主義や格差社会』によって商品・サービス・娯楽・ネット・情報を絶えず小さな頃から受け取り続ける社会環境になったことが、『仕事・職場・上司部下(先輩後輩)のような関係』を“最後のストレッサー(数少ない思い通りにならない不満な事柄)”として受け取りやすい個人を増やしてきたという側面もあるだろう。
現代の先進国では、仕事以外の社会生活の諸側面における『快楽性・娯楽性・自由度』が高まっている一方で、『仕事の分量・負担感』は過去に比べてほとんど減っていないどころか、現在のほうが主観的に負担や拘束を苦痛に感じる度合いが大きくなっているというアンケート調査もある。特に自分の適性や能力発揮が生かされていない仕事状況において、仕事におけるストレス耐性・忍耐力は低下しやすくなり、逆に過剰適応(義務感・責任感の過剰)による燃え尽きで過労自殺や重症の精神障害にまで追い込まれる人もいる。
また現代の仕事を巡る格差では、『主観的に面白くて刺激的な発展性(創造性)のある仕事』をしている人ほど所得が高くなりやすく、『主観的に面白みがなくて義務的な発展性(創造性)のない仕事』をしている人ほど所得が少なくなりやすい傾向があったり、『金銭の大小よりも時間・自由度を重視する価値観』が広まっていることもあって、『忍耐・我慢・継続の美徳』を裏付けていた終身雇用・年功序列の実利がなくなってきていることも影響する。
従来の『うつ病(気分障害)』と『新型うつ病』との違いを上げると以下のようになるが、古典的な従来のうつ病(大うつ病性障害)とは脳の機能障害としての『内因性うつ病』のことである。『心因性うつ病』というのも確かにあって、精神的ストレスや苦痛なイベントが発症のトリガーになることは認められていたが、基本的には『心理的原因がなくても発症されたと思われる精神病』の位置づけであった。
1.従来のうつ病の病前性格は、テレンバッハのメランコリー親和型性格や下田光造の執着性格であり、『生真面目・秩序志向・他者配慮性・自罰感』という仕事・社会規範や苦手な人間関係に過剰適応しようとして、そのストレスや疲労に耐え切れずに発症する燃え尽き症候群のタイプである。
新型うつ病(非定型うつ病)の病前性格は、自己愛性パーソナリティや境界性パーソナリティ、回避性パーソナリティなど『パーソナリティ障害の前駆的・類似的な傾向』を示すことが多く、『承認欲求の強さ・自己主張性・ストレス回避性(打たれ弱さ)・他罰感』といった仕事のストレスや煩わしい人間関係に少し適応しようとするが、適応することの苦痛に過敏に反応して発症する適応障害型のタイプである。この病前性格傾向は、自己愛・消費・自由が称揚される現代社会ではむしろマジョリティを形成するものである。
2.従来のうつ病は『食欲・睡眠欲・性欲(恋愛欲求)』の生理的欲求が抑制されて、仕事も遊びも全てに対して意欲がなくなり興味を失う『全般的退却・精神運動抑制』が起こる。生物学的原因・素因を有する脳の機能障害を感じさせるものである。
新型うつ病は『食欲・睡眠欲・性欲(恋愛欲求)』の生理的欲求が抑制されるよりもむしろ促進され、『過食・過眠・性欲亢進』などの症状がでやすい。日内変動も、従来とは逆で朝に気分が良くなり、夕方に落ち込みやすい。好きな遊び・娯楽はできるが嫌な仕事などはできないという『選択的退却・部分的な精神運動抑制』が起こる。心理的原因を引き金とするストレス反応性障害を感じさせるものであり、かつて『抑うつ体験反応』と呼ばれたものの軽症例のようでもある。
3.従来のうつ病は病識がなく、体がだるくて気力が湧かないという病識があっても身体疾患の悪化として自分の体調を解釈する向きが強いため、精神科・心療内科の受診動機は極めて弱い。『うつ病の啓発的な書籍・リーフレット』などにも目を通したがらず、悪く言えば『うつ病なんかは精神が弱い人間がなる病気で自分がなるはずがない(うつ病であるということを恥ずかしく思う)』という精神疾患に対する偏見・差別のような認識を潜在的に持っていることが多い。
新型うつ病は病識があるだけでなく、事前に専門書籍やウェブなどで『うつ病の症状・特徴・治療法と薬・予後』について、プロに近い十分な知識・情報を調べ尽くしていることが多く、抗うつ薬・睡眠薬の名称や効能、官能的(知覚的)実感についても相当に詳しいことがある。自分の心身の不調をうつ病やパニック障害などの診断基準に当てはめて感じることも多く、精神科・心療内科の受診動機は高くて、心理的な悩み・人生のつらさに関する話を聞いてもらうことも好きである。うつ病はじめ精神疾患に対する偏見・差別などはなく、むしろ現代はストレス氾濫による精神疾患増大の時代であるという認識を持つ。