総合評価 93点/100点
新しい『スパイダーマンシリーズ』では、このアンドリュー・ガーフィールドとエマ・ストーンのコンビの恋愛関係の変遷と葛藤の表現手法が見事であり、単純なアメリカンヒーローものというよりは、VFXを駆使したアクション映画と感動的な恋愛映画をハイブリッドした魅力を持っている。
アメリカを離れてオックスフォード大学に留学することが決定したグウェン・ステイシー(エマ・ストーン)に対して、スパイダーマンのピーター・パーカー(A.ガーフィールド)は『グウェンのことを大切に思うならもう近づくな』というグウェンの父の死の間際の遺言に呪縛されており、グウェンとの関係を高校卒業を契機に静かに終わらせるべきだという考えに傾いていた。
つれないパーカーの態度の変化や別れの宣言に際して、グウェンも『お互いに別々の道を歩かなければならない時が来たのね』という認識を持つようになり、自分がかねてから目標にしていたオックスフォード大への留学と新たなキャリアを模索し始める。ニューヨークの治安維持のためいずれにせよイギリスにまではついていけないという口実に頼るパーカーは、グウェンのオックスフォード行きを、彼女との付き合いや思いに踏ん切りをつけられる好機と捉えるようにした。
卒代を務めた学校一の優等生であるグウェンの前途洋々たる未来に対し、ニューヨークの凶悪犯罪や悪党との戦いに明け暮れることをやめられないスパイダーマンの自分が関わり続けることの危険性や不利益を思うと、フェードアウトして別れることが最善だという結論に行き着く。
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総合評価 87点/100点
『アベンジャー』シリーズの最新作で、キャプテン・アメリカが第二次世界大戦中に死亡したはずの親友のバッキー(ウィンター・ソルジャー)と予期せぬ再会をして戦うことになる。ナチスドイツ(作中ではハイドラ)の残党のマッドサイエンティスト、冷戦時代の旧ソ連の人体改造実験など、アメリカがナチスドイツやソ連と対立していた歴史の遺恨が現代にまで波及しているような作品の構造を持つ。
第二次世界大戦後から現代まで冷凍保存されていたキャプテン・アメリカ(血清によって改造された超人兵士)であるスティーブ・ロジャースは、『アメリカの歴史性・戦史・勇気』を生身で体現して経験している象徴(第二次世界大戦の生ける伝説)のような存在として設定されている。
見ようによってはアメリカの愛国心喚起のプロパガンダ性のある映画でもあるが、アメリカ人から見たアメリカ人が好みそうな正義・勇気・歴史観のあり方の類型に『自己犠牲・献身性・忍耐性・防衛のための攻撃』が含まれている辺りは、アメリカだけではない日本や他の国にも通じる普遍性が織り込まれている。
キャプテン・アメリカは、星条旗の星印を模したヴィブラニウム(架空の破壊不可能な金属)の盾を武器としているが、超人的な能力は『一般人の能力+α』といった程度で相当に強いが完全に無敵な兵士ではなく、時に打ち負かされたり時に死にかけたりもする。
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総合評価 89点/100点
敵地に潜入するアメリカ軍の危険な特殊工作任務を遂行するネイビーシールズの精鋭たちが、苦痛と恐怖、疲労、不快に限界まで晒されしごかれる映像から映画はスタートする。軍の各部隊から寄り集められた精鋭の多くは、過酷さを極めるネイビーシールズの訓練に耐えられずに自分で『屈服の鐘』を鳴らして脱落していき、最後まで残った隊員たちはその限界状況の共有体験から実の兄弟以上の強い絆で結ばれている。
アフガン戦争後の対アルカイダ掃討戦における一つの作戦の実話をベースにした作品。最後まで戦い抜く精神力を試されて乗り越え続けてきた4人のネイビーシールズが、アフガニスタンの山岳地帯で『死が避けられない銃撃戦の極限状況』に陥り、最新鋭のライフルを用いた決死の抵抗戦も虚しく、足場の悪い地形に慣れたタリバン兵の大軍に押されて次々に戦闘不能な深手を負わせられていく。その絶体絶命のアフガンの岩山での戦闘から、ただ一人のアメリカ兵だけがいくつもの銃創・骨折を負った瀕死の状態で生還した。
ストーリーといえばただそれだけであり、端的にはアフガン戦争における『タリバン掃討作戦』のアメリカの正義を称揚して、タリバンの残酷さとパシュトゥーン人(反タリバン勢力)と米軍の友誼を浮き彫りにする映画なのだが、アフガンの峻険な岩山で展開される戦闘を中心に、『戦争映画としての緊張感・臨場感(負傷の苦痛のリアリティ)』が抜きん出ている。
戦争シーンの迫力とネイビーシールズの絶望的状況での抗戦(戦闘ヘリ・アパッチの機銃掃射による支援を待ち焦がれる状況)に引き込まれて、一気に最後まで見てしまう作品世界の勢いがあるが、4人の隊員は銃撃による負傷だけではなく岩山・崖からの激しい滑落を繰り返して、全身が段階的にずたぼろに切り裂かれて満身創痍の状態になっていく。
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総合評価 88点/100点
『キックアス』の基本路線はポップでコミカルなアメリカンヒーローものだが、映像表現そのものは結構グロテスクな流血やハードな殺陣を伴っていて、アクション映画としての見所も多くある。会話の中ではスラングや猥語が次々飛び交い、ふざけた敵役のボスは口うるさい自分の母親を偶発的に殺してしまったことから、“マザーファッカー”を自称して暴れまわる。
勧善懲悪のアメリカンヒーローの代表であるバットマンやスーパーマン、スパイダーマン、アイアンマンなどには『財力・特殊能力・宇宙人・身体改造』など普通の人間にはない特別な強み(力の源泉)があるが、キックアス(アーロン・テイラー=ジョンソン)には『正義心・勇気』以外の何もなく、おまけに自前の緑ベースの衣装もセンスがなくてださい。
キックアスは悪事をしている奴らを見逃してきた自分が許せないという動機から始まったオタク系の『なりきりヒーロー』だが、特別に身体を鍛えているわけでもなく格闘技や暗殺術の達人でもないため、犯罪者とぐだぐだな殴り合いになった挙句に負けてしまったりもする。キックアスはSNSのコミュニティを通じて、自分と一緒に自警活動をしてくれるヒーローを募集しているのだが、強い者も弱い者もごちゃ混ぜになった同好の士が集まって『ジャスティス・フォーエバー』という自警集団を結成する。
ちなみに現代のアメリカの州では、当然ながら一般市民の自警活動(実力行使・徒党で威嚇する警察代替行為)は違法行為であり、『キックアス』でも仲間のヒットガールがキックアスを助けるために敵を殺してしまったことで、警察による自警活動(ジャスティス・フォーエバーのような自警団)の摘発が激化していったりもする。
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内閣総理大臣に『憲法解釈権』があるとするならば、内閣総理大臣は旧帝国憲法下における主権者の天皇以上の権限を持つことになるわけだが(昭和天皇でさえ立憲君主であることを自認され天皇機関説を支持されていたわけで)、『憲法解釈を司ることができる個人の代表者』というのは英国のマグナカルタ以前の専制君主、市民の第一人者(民意の集積者)として月桂冠を被った古代ローマ皇帝のようなもので『近代化された国制・法制の否定』の願望のようなものである。
ブルボン朝のルイ14世は『朕は国家なり(朕を制約する上位法はない)』とのたまったとされるが、君主制への逆行は冗談にしても選挙で選ばれた政権党の代表者(首相)が、憲法解釈を自分の思想信条で左右して立法措置(政策遂行)までできるというのはいずれ時代錯誤な話ではある。選挙で勝っただけの政権与党が、イコール憲法原則の中身であるはずもない。
解釈改憲で安倍首相擁護=渡辺みんな代表
安倍首相は立憲主義の本質を理解していないという批判をされているが、首相は国会答弁において『国家権力を制約するという意味の立憲主義は、絶対王政時代のものであって民主主義の現代にはそぐわない・選挙による審判や大多数の国民の民意があれば、国家権力を立憲主義で制限する必要がない』という持論を語った。
続きを読む 内閣総理大臣と『憲法解釈権』が結びつくと、『立憲主義・三権分立の歯止め』がなくなる。 →
総合評価 72点/100点
学歴もコネも外渉資格もないジョーダン・ベルフォート(レオナルド・ディカプリオ)は、何とか採用面接で押し切って22歳で憧れだったウォール街の証券会社(投資銀行)に就職を決める。だがその翌年、金融恐慌に襲われ働いてたロスチャイルド証券は倒産、ジョーダンの株屋(証券ブローカー)としてのキャリアは断絶するかに見えたが、ジョーダンにはロスチャイルド証券のハイテンションな先輩から教わった『非人間的な金儲け(銭ゲバの徹底)の黄金則』があった。
一つ、終わりなき金儲けのためのエネルギーを補充するためにセックス(良い女)を求め続けること。性欲があってやりたいからやるのではなく、稼ぐための興奮状態を切らさないためにやるのだ。証券会社に入る前は学生時代に結婚した奥さんと上手くやっていたジョーダンも、大金を掴み始めてからは見栄えのするど派手な美人のトロフィーワイフに乗り換えてしまい、性的にも道徳的にも倫理観はブッ飛んでどこかに追いやられてしまう。
この映画、全体の3割くらいは男と女の性的事象の過激な表現に費やされている、R指定は当然だが恐らく地上波の21時枠での放送はない類(性的に固い視聴者から苦情が寄せられる類)の作品だろう。
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