「マスメディア」タグアーカイブ

仏教用語の「般若(パンニャー)」とは何か?、京アニ放火殺人事件の実名報道問題について

○「般若(はんにゃ)」の語源はサンスクリット語プラジュニャー(パンニャー)で、「悟りにつながる真実の智慧・真理」が原義だが、なぜこの言葉が日本に伝来して「鬼女のお面」になったのかの過程が不明というのは面白い。奈良の般若坊という面打ち技師が鬼女の面作りを得意にしていたらしい以上の伝承・由来は殆どない。

般若の一般的イメージは「おどろおどろしい鬼女の顔・面」に固定されてしまった観がある。だが般若心経でもおなじみの「完全かつ最高の智慧を完成」させるという意味を持つ「般若波羅蜜(はんにゃはらみつ)」は、大乗仏教の修行方法としてはかつては他の波羅蜜(彼岸到達の方法・最高の状態)よりも重視された。

彼岸に至るあるいは悟りのための「完全かつ最高の状態」を意味するのが、「波羅蜜(パーラミター)」である。大乗仏教・菩薩行の「六波羅蜜」として知られるが、「布施・持戒・忍辱・精進・禅定」を成立させるための前提的かつ完全的な智慧が「般若(後に空)」とされた。なぜそんなものが「鬼女の顔」と連結されたのか……

続きを読む 仏教用語の「般若(パンニャー)」とは何か?、京アニ放火殺人事件の実名報道問題について

マスコミはなぜ犯人の卒アル写真をさらすのか?、人がいじめをやめられない原因、所沢中学2年殺人事件の雑感など

○社会的な関心と影響が大きな殺人・強盗・指名手配など凶悪事件は加害者・被害者の写真なしだと事件の悲惨な現実感が曖昧になりただの名前・文章で消費される懸念はある。

マスコミが事件報道で卒アル写真を晒すのはなぜ? プライバシー保護と「犯罪抑止」の問題 (キャリコネ – 08月21日 13:20) http://mixi.at/adfKwdH

最大限にプライバシーを保護するのであれば、連続殺人・猟奇殺人などを除いて「写真・情景・再現VTRなしの匿名報道」になる。「昨夜、東名自動車道で煽り事件が発生し、興奮したA容疑者が被害者のBさんを威嚇して殴りつけ全治1ヶ月の怪我を負わせました」の文章だけで報じられて終わり、リアリティが極端に欠ける。

加害者も被害者もどこの誰だか全く分からないということになると、ニュースの内容・事実自体への関心度・認知度も当然低くなるわけで、すべての事件・事故の報道が無味乾燥化して社会的な問題・事件に無関心になる恐れがある。被害者の名前・写真によって、事件・事故への関心度や署名数などが格段に変わるケースも当然ある

○所沢中学2年殺人事件は、広義のいじめに対する報復事件だが、加害者側に言語能力・社会性の未熟さという発達障害的な特徴が指摘されている。発達障害の有無ははっきりしないが、「(被害者少年から誘われて)我慢して嫌な友人関係を続けていて、仕返しの機会を伺っていた」という歪な関係を早めに解消すべきだった。

被害者の本郷功太郎さん(13)の嫌がらせの程度は分からないが、直接の暴力というよりは教科書を隠したり言葉でからかったりというレベルのようである。殺害されるほどのいじめとは到底言えないが、「継続的な嫌がらせ・屈辱的な関係性」などが被害意識の芽生えやすい思春期の少年に復讐心の悪影響を与え続けたのかも。

殺された少年の親御さんからすれば「それくらいのことで殺されるなど許せない・加害者少年に厳罰を臨む・自分にとっては将来が楽しみな可愛い子供だった」ということに当然なるだろうし、極端な不良や問題児というわけでもなかったのだろうとは思う。「人の嫌がることをし続ける潜在的リスク」が最大幅で振れた事件だな。

続きを読む マスコミはなぜ犯人の卒アル写真をさらすのか?、人がいじめをやめられない原因、所沢中学2年殺人事件の雑感など

島根県女子大生殺人事件で容疑者死亡のまま書類送検:動機・状況など真相は分からず

2009年10月に島根県立大1年平岡都さん(当時19)がバイトの帰路に行方不明となって、広島県の臥龍山中で切断された遺体が見つかった残忍な事件は、当時は相当に大きな扱いで長期間にわたってメディアで追跡報道されたので記憶に残っている。

何度もテレビ放送された防犯カメラに映っている被害者のボーダーの服装は印象に残りやすく、連れ去りや誰かと一緒にいる場面などの目撃証言を得るためシラミつぶしの聞き込みが行われていた段階では、遠からず解決する型の事件にも思えた。

しかし、目撃証言や被害者周辺の人間関係のトラブル(恋愛問題・ストーカーなど)は結局一件もなく、有力な情報提供に300万の懸賞金まで懸けたがそれでも犯人に結びつくような手がかりは得られなかったようだ。警察は捜査網を島根県を超える広島県・山口県にまで広げて、被害者の女子大生にわずかでも関係や接点がある人は一人も残さないほどの人海戦術の事情聴取を行ったが、犯行に関係したと疑えるような人物には一人も行きあたらなかった。

事件は迷宮入りの様相を見せて、次第にマスメディア報道の頻度も減り、いつの間にか話題にも上りにくくなっていたが、7年後に意外な形で犯人の存在が明らかとなった。報道されている限りでは、容疑者とされる島根県益田市の会社員(33)は平岡さんとの接点(過去に会ったことがある・連絡していた形跡がある・ストーカーをしていたなど)はなかったとされ、夜道での行きずりの拉致監禁に近いような型の犯罪だと見ているようだ。

容疑者とされる会社員の名前は矢野富栄(やのよしはる)だとネットでは既に明らかになっていて、中国道の交通死亡事故の2009年11月の記事を検索すれば誰でも分かる状態になっている。新聞報道がこぞって名前を出さないのは、本人が死亡していて書類送検しても不起訴になってしまうからで、一方的な状況証拠だけしか出せない以上、法的には不起訴で有罪判決を受けない容疑者の段階に留まり、本人に抗弁権もないという判断からだろう。

被害者の遺体が見つかった2日後の2009年11月8日、容疑者は母親を乗せた車で山口県の中国自動車道を走行中に車が全損して炎上する死亡事故を起こしている。目撃者によると相当なスピードでガードレールを左右にぶつけ続けながら走行していたにも関わらず、ブレーキ痕が皆無であったことから概ね犯罪発覚とその後の社会的制裁を恐れた逃避的な自殺・心中事件だと推測される。

容疑者は一度は警察が来て何か知らないかという大雑把な事情聴取をされたというから、自殺した理由として警察が自分の職場か地域かにまで聴き込み調査に来た(遠からず自分が犯人であることが露見するのではないかとの不安が強まった)ということも考えられるかもしれない。

警察は当初から捜査範囲を県内全域の広さくらいまで取っていたので、浜田市と隣接する益田市の容疑者の地域にまで警察が来ること自体はおかしくないが、どうして容疑者が軽い聴き込みをされたのか(特別に疑われてあれこれアリバイなどを聴かれているわけでもなく、形式通りの何か知っていることはないかだけの質問だったかもしれないが)の理由は明らかにされていない。

島根・広島両県警の合同捜査本部が書類送検する方針を決めることになった決定的証拠は、『行方不明後の平岡都さんの画像ファイル(33歳の容疑者の遺品とされるデジタルカメラに記録されていた写真)』だとしているが、写真の日時のデータや平岡さんの様子・状況などからこの33歳の容疑者が犯人だと断定するに足るものなのだろうが、被害者・遺族への配慮から詳細は公表されない可能性が高い。

この事件は、何の落ち度もない女子大生が突然連れ去られるなどして殺されたという残酷な事件であるが、それと合わせて遺体損壊や死後の遺体の扱い(遺棄のために切断するだけでなく不必要に刃物・火で傷つけられた痕跡があったとされる)などに猟奇的な異常性が見られたことでも話題になった。

だが、本人が処罰から逃避するように交通事故で死んでしまったことで、『事件の動機や連れ去り後の状況・異常心理の解明』については今後も不可能になってしまい、真相不明のままになる非常に後味の悪い事件になったように思う。

常識的に考えれば、動機は若い女性を標的とした広義の性犯罪ということになるだろうが、容疑者が行動し始めた当初から平岡さんだけを狙っていたのか、若い女性であれば特定の人物でなくても良かったのかの違いはあるし、初めからナンパ(夜間に女子大生に声かけして車に乗せようとする事案は周辺で複数回起こっていて大学が注意喚起していたという)や性犯罪を超えて殺害することまで考えていたのか否かでも事件の様相は違ってくるが、容疑者死亡で誰にも犯行を口外していないため、犯行時の具体的状況が明らかにされることはない。

常軌を逸した遺体損壊の状況だけを見ると、非常に凶悪で残酷な大胆な人物像も浮かぶが、見方によっては中途半端な遺体損壊の状況は、逆に完全に遺体を切断したり焼いたりしきれないその場からすぐに立ち去らずにはいられない『臆病さ・小心さの逃避心理』の現れとも解釈できる。実際、遺体発見後の2日後に自殺と見られる交通事故の死に方をしたように、この容疑者のパーソナリティーの基本は『小心さ・無責任・衝動性(殺人も自殺も極端な衝動)と逃避傾向』だろう。

続きを読む 島根県女子大生殺人事件で容疑者死亡のまま書類送検:動機・状況など真相は分からず

HuluにNHK大河ドラマや連続テレビ小説が登場。「龍馬伝」「篤姫」「ゲゲゲの女房」など順次配信

Huluは日本テレビに買収されてから日本ドラマの配信が急増した。映画の最新作・名作などの更新は停滞しているので、『日本・海外のドラマ配信』がメインの有料動画サイトになったが、NHK大河は公開本数を増やして欲しい。

Huluに朝ドラ&大河キター! 「龍馬伝」「ゲゲゲの女房」など順次配信

『篤姫』はリアルタイムでほぼ最後まで見たが、『龍馬伝』は前半3分の1くらいで離脱したので続きを見てみるか。人間の行動や犯罪遭遇率を予測する完全監視システムの“マシーン”を題材にした『パーソン・オブ・インタレスト』という米国ドラマはなかなか面白かったが、『テンペスト』『悪夢ちゃん』とかも見れば面白い。

続きを読む HuluにNHK大河ドラマや連続テレビ小説が登場。「龍馬伝」「篤姫」「ゲゲゲの女房」など順次配信

STAP細胞問題:“研究不正・STAP細胞の有無”を巡る理研と小保方晴子氏との対立

理化学研究所の調査委員会は、STAP細胞研究の調査結果について『実験データ及び実験画像の改竄・捏造が行われた研究不正に当たる』と認め、これらの一連の研究不正は小保方晴子ユニットリーダーが単独で行ったものだと指弾し、組織全体の責任は間接的なものに留まるとの見方を示した。

小保方氏本人の論文の書き方の間違いや研究者としての倫理観の甘さなどの問題はあったが、理研は小保方氏個人を切り捨てることで組織防衛の姿勢を明確にするような会見を行ったことになる。関係者の処分は後日に発表されるようだが、懲戒処分は解雇を含んだかなり厳しい処置になると思われる。

STAP細胞:理研「研究不正は小保方氏単独で」

小保方氏本人が『STAP細胞の作製に成功したという事実に不正はない』と主張していることから、泥沼の法廷闘争に持ち込まれる恐れもあるが、『研究・実験の結果の正しさ』があっても『正しさを立証するための手順・方法・証拠』に大きな落ち度があれば、科学者としての信用・名誉は保たれづらいものにはなる。

続きを読む STAP細胞問題:“研究不正・STAP細胞の有無”を巡る理研と小保方晴子氏との対立

暴力団関連の犯罪を伝えるメディアの報道姿勢と警察のウェブサイトにおける実名公表

暴力団排除のために検挙された暴力団構成員の氏名を、警察のウェブサイトで一週間にわたり公表しているということだが、一般企業が暴力団のフロント企業や関連団体の構成員との取引を回避するための参考情報の一つ(名刺レベルならいくらでも架空企業・偽名を用いていそうだが)にはなるだろう。

暴力団員の実名にアクセス急増 4道県警がHPで公開

暴力団関連の凶悪犯罪のメディア報道で疑問に思うことの一つは、殺人・強盗などの凶悪事件であっても、一般人の容疑者のような『家族や周辺へのインタビュー報道・過去の学校生活や人間関係を掘り返すような執拗な報道』が全くといっていいほどなく、ただヤクザの構成員ということしか分からず、その人の人となりやそれまでの人生の履歴、若い構成員でも同級生の持っていた印象などが全く伝わってこないことだ。

続きを読む 暴力団関連の犯罪を伝えるメディアの報道姿勢と警察のウェブサイトにおける実名公表