○ノーベル文学賞は「一般人好みのエンタメ性のある作家作品」は選ばれにくいが、村上春樹は「現実(労働・家族)のみに立脚できなくなった現代人の自己愛・自己拡散・幻想と歴史」を描く作家だ。
【ノーベル文学賞】村上春樹さん、狂騒10年以上…果たして今年は? (http://mixi.at/af0Jddq)
村上春樹の物語には平均的なサラリーマンや家庭人は登場しない。「ノルウェイの森」「騎士団長殺し」「1Q84」の系譜は「学生・金持ちの自殺・セックス・精神病・画家・趣味人・成功した隠棲者・新興宗教・娼婦・殺し屋」などのキーワードを持つが、現代人の普遍的な欲望と挫折(自己拡散)を対にした幻想物語と見れる。
村上春樹は国家・文化・世代を超えた幻想物語の名手だが、その幻想の中心に「現代社会が抱える問題・病理・自己愛(労働・生活・家族に専念できない観念の現代人)」とつながっている。世界文学として普遍性があるかは見方によるが、享楽・退廃の恐ろしい場から生活・日常に戻ろうとする足掻きが一定の人に響くのだろう。