パリ同時多発テロは、米国同時多発テロと同じく『一般市民』を標的としたイスラム過激派による不意打ちの攻撃であり、イスラム国(ISIL)という狂信的な仮想軍事国家(過激派のが改めて『先進国・国連が主張する人類普遍の価値とするもの』に一切従うつもりがないことを示したテロ事件である。
一般市民が集まり憩うレストラン、演劇鑑賞する劇場、スポーツ観戦をする競技場がパリ同時テロで狙われたが、これらはいずれも国家の軍・警察などの国防・治安維持に関わる人間が皆無な場である。
イスラム国の非対称的な無差別テロの卑劣な戦略性は、『無抵抗な一般市民』を一方的に虐殺することによって、先進国内部の治安を崩壊させて恐怖・不安を煽り『テロとの戦いの無力感』を思い知らせることによって、フランス国民のテロへの徹底抗戦意識を不信・不安で分断させ、政府に中東紛争(IS制圧のための空爆支援)から手を引くように圧力を掛けさせるというものである。
フランスは言うまでもなく、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本と並んで『現行世界秩序における普遍的価値・人権思想の唱導国家』である。歴史的に見ても1789年のフランス革命において絶対王政を転覆させ、『フランス人権宣言(人間と市民の権利の宣言)』と『自由・平等・友愛の精神』によって連帯したフランス国民による非封建的な国民国家は、現在の自由民主主義国の模範・雛形である。
フランスのオランド大統領はテロ攻撃を受けた後、即座に国家非常事態宣言を出して厳戒態勢を敷き、犯行声明を出したISの下部組織に対して『テロと戦うフランス国民の団結と連帯は揺らがない』との意思表示をした。
フランスは英米と連携してISとアサド独裁政権に武力で対抗する『有志連合の要』であるから、フランスが脱落することは米国のオバマ大統領が主張する『人類普遍の価値』が暴力に対して怯んだことを意味してしまう。相当な犠牲が出たとしても、オランド大統領がISに対して弱気な姿勢を見せたり外交政策を転換する素振りを見せたりすることは現時点では有り得ないだろう。
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