「家族」タグアーカイブ

佐世保市高一殺害事件と加害者のパーソナリティー形成:マンションの一室・大金(現金100万円)を与える親子関係の問題

小動物の殺害・虐待は共感性や道徳観念を欠く行為障害(反社会性人格)の兆候で、サイコパスの生活歴に含まれやすいが、『親子間の愛着・対話・感情の共有』が欠如した家族歴の問題も想定される。

<高1同級生殺害>冷蔵庫に猫の頭部 現金100万円も所持

弁護士・資産家とされる父親は、謝罪文の文面を見ると法律家・常識人としてまっとうな文章を書いているが、父親の『生活態度・女性関係・妻や子供との向き合い方』などを見ると『子供のためにできる最善のことをしてきたつもり』の部分には疑問も感じざるを得ない。社会的地位や公的言動を踏まえた外面はしっかりしてるが。

海外のサイコパスや大量殺人犯の生育歴は様々ではあるが、経済的には比較的裕福な家庭で育った者もいて、『金銭と愛情を混同させるような育て方・親との愛着(アタッチメント)や共感感情の欠落・虐待や差別感情(世の中には生きる価値のない人間がいる等)の正当化』が人格形成に一定の影響を与えたと推測される例もある。

続きを読む 佐世保市高一殺害事件と加害者のパーソナリティー形成:マンションの一室・大金(現金100万円)を与える親子関係の問題

映画『思い出のマーニー』の感想

総合評価 79点/100点

この世には『内側』と『外側』があって、自分は他人と上手くふれあったり交流することができない『外側の人間』だと思い込んでいる内向的な少女の杏奈。気管支喘息の発作がある杏奈は、美術の授業で写生をしている時に発作を起こして塞ぎ込んでしまう。喘息による健康上のコンプレックスや活発に動けないこともあって、学校の友達と親しく打ち解けることができずにいる。

血のつながりがない母親・佐々木頼子との関係も、母親が行政から特別な育児手当てを受け取っていることを知った時からぎくしゃくし始めている。頼子はとても優しくて杏奈を実の子供として大切に育てているのだが、手当てのことが脳裏にちらついて、自分が母親の本当の子供ではない(もしかしたらお金がもらえるから大切に育ててくれているだけかもしれない)という現実がのしかかってくる。頼子も杏奈のよそよそしい反応を感じ取って、どこか他人行儀な距離のある遠慮したやり取りになってしまいがちである。

自分の心を開くことができず、学校で友達がいないことも合わさって、杏奈はますます自分を外側の孤独な人間(みんなとは決定的に違っている人間)、誰とも親しく理解し合えない人間だと思うようになっていく。他者との交流を拒絶して自分の殻に閉じこもってしまいやすい杏奈の転機は、喘息の転地療法で親戚のおじさん・おばさんがいる『海辺の村』に行ったことから始まる。

続きを読む 映画『思い出のマーニー』の感想

現代の先進国における“少子化のトレンド・子供を持ちたい願望の個人差”について。

女性であれば結婚式に憧れて、自分の子供を妊娠して産むことを求めるという近現代のステレオタイプは、20世紀まではほぼ『人間の動物としての本能』として解釈され、父性愛はともかく母性愛は『地母神・太母の古代信仰』より連綿と続く普遍的な女性ならではの他を労わり包容するメンタリティと考えられてきた。

母性とはセックスなのかジェンダーなのか、人間が社会的動物であり文化的規範を設ける種であり、社会的な同調圧力(異端視されること)に弱い存在である以上、セックス(先天性)とジェンダー(後天性)の境界線を明確に引くことはできない。

「子供が欲しくない」女はおかしい? フランスで30代女性の37%が母親にならない理由

人間はセックス(生物学的性差)の必然によって結婚して出産してきたという歴史は持っていない、近代初期までは結婚も出産も義務であったし、それ以前の時代には非農家の庶民階級は非婚・無子の割合も高くて(農業経済では労働力確保のための多産傾向はあったにせよ)、国家の人口規模は今よりも格段に小さかった。

結婚・出産が相手が好きな人であるか否かということも余り関係していなかったライフイベント(共同体的な通過儀礼・集団規模の維持)であった『取り決め婚・身分別の婚姻(親と一族の意向と双方の家柄の均衡発展を反映した婚姻・出産)』の歴史は長い。

一方、現代の結婚や出産は、付き合う異性のストライクゾーンが広くて人生に対して大雑把な考えの人でも、『それなりの個人の好き嫌い・前提条件・将来予測・人生の理想像』が反映された結果として行われるものになっており、『親・社会・他者から強制される結婚・出産』をしている人はかなり希になっている。

結婚していなければ恥ずかしいとか、みんなが子供を持ち始めたから自分も欲しくなったという『社会的圧力による間接的な強制』は現代でもあるが、それは無理矢理にさせているというよりは個人が周囲に合わせて無難な人生を送りたいからという選好ではある。

続きを読む 現代の先進国における“少子化のトレンド・子供を持ちたい願望の個人差”について。

家庭環境や親子関係が悪い事は“殺人(犯罪)の免罪符”にはならないが、

『生命・人生の価値』を学べない劣悪・冷淡な環境で育てられた人や誰にも大切にされていない孤独感を抱えた子供のほうが、そうでない子供よりも性格形成プロセスにおいて精神的な悪影響を受けやすいという現実は深刻な問題として今も昔もある。

<高1同級生殺害>自分のことを「僕」1学期は登校3日

殺人のような凶悪犯罪にまで至る子供は少ないが、『親からの虐待・ネグレクト(無関心)・裏切り・親の反道徳的な生き方』は子供の心や性格構造に深刻なダメージを与える。

自分の生きている価値が分からないから(現状が孤独でつらくて親・他人・社会が憎かったり軽蔑したりしているから)、他人の生命の大切さ(先生・みんなのいう生命の尊さ)も共感的に実感しづらいという反社会的性向を強める恐れがある。

未成年者の非行や暴力、犯罪集団化、いじめ、軽犯罪、ひきこもりなどの背景には、『親からの虐待やネグレクト(子の放置・子の教育の責任放棄)』や『学校と家庭の両方での孤立化(話せる共感し合える相手の不在)』、『親の反社会的・反道徳的な言動の影響(見せかけの外面だけは適応的だが家庭内では冷淡さ・虐待・DV・不倫があるなど)』などが見られることが多い。

家庭環境が悪いから、親から愛されなかったから(父親が妻子を放置して好き勝手に遊んでいたから)、唯一の理解者だった母親が死んだからといって、無関係な友人を殺したり傷つけることは正当化できないし、それは『本人の甘え・身勝手さ』に過ぎないという厳しい意見も多くある。加害者よりも人生を強制的に奪われた被害者のほうが酷い目に遭っているというのも、殺人という重大な結果から見れば当然の意見である。

続きを読む 家庭環境や親子関係が悪い事は“殺人(犯罪)の免罪符”にはならないが、

長崎県佐世保市の女子高生殺害事件とその心理要因の想定

容疑者の高校一年生の女子生徒が、なぜ親しかったとされる友人を殺したのかの動機は不明だが、それまで大きなトラブルや喧嘩が無かったと推測されている事から(そもそも険悪な仲であれば自宅にまで遊びに行かないだろう)、加害者生徒の『対象喪失・家族トラブル』に関わる心理状態の変化が関係している可能性があるのだろう。

高1女子を殺害容疑、同級生の女子生徒を逮捕 長崎

15歳の女子高生が『マンションで保護者のいない一人暮らし』というのは常識的に考えれば異常というか奇異な生活形態であり、『全寮制の高校(入寮している生徒)以外の女子高校生の一人暮らし』というのは身近な例ではまず聞いたことがない。

勤労学生もいる定時制・夜間高校であればそういった一人暮らしの生徒がいる可能性もあるが、県内有数の普通科の進学校(加害者は東大志望で成績もそれなりに良かったという)で、親がいない一人暮らしのマンションから学校に通っている生徒というのは日本全体でも極めて少ないのではないか。

マンションの外観を見ると築年数も新しくある程度の高級感もあるので、ワンルームの可能性もあるが高校生にしてはなかなか贅沢な部屋の感じで、家賃も古いアパートのような安さではないだろう。

続きを読む 長崎県佐世保市の女子高生殺害事件とその心理要因の想定

若者の『恋愛離れ・おひとりさまの増加』の現象を起こしている原因の考察

若者の『恋愛・結婚離れ』とはいうが、昔も自発的な自由恋愛は少なかったのかもしれない。世界的・歴史的に見ても個人としての男と女が、『自分の好み・選択・欲求・自己責任』だけで相手を探して付き合ったり結婚・出産したりという時代は殆どなかった。『家柄・血統・宗教・生活・親の希望や社会規範(周りの強制的な干渉)』などで半ば運命や義務として恋愛をすっとばした結婚・出産(見合い婚や取り決め婚)が行われることのほうが多かった。

恋なんてめんどくさい!?おひとりさま大歓迎な若者たちの恋愛事情

結婚とは惚れた腫れたや性的・人格的な魅力(好みのタイプ)の比較及び追求というよりは、ほとんど『生活・育児のために必要な男女の役割分担の結合』であったからであり、好きな人が見つからなかったらしないでもいいかといった選択肢はなく、一定の年齢でしなければならない(そのために周囲も見合い・紹介なりの強い干渉をしてくる)ものだと受け取られていた。

現在の40~50代以上のバブル景気を経験したような男性にしても、みんなが好みのタイプの女の尻を追っかけ回して、躊躇いなく肉食系の勢いで口説きまくる『恋愛至上主義者』だったかというとそうではないだろう。

今と同じで『女性に上手く話しかけられない人・女性の扱いやデート(遊び)の計画が苦手な人・一緒にいて異性を楽しませたり魅了したりすることができない人・女よりも趣味や自分の世界に生きたい人』だって相当な割合で含まれていたはずだが、『30歳くらいまでには結婚しなければ恥ずかしい・差別的なまなざしで見られかねない(女性であれば生活できなくなる恐れがある)』という周囲・現実の圧力や世間体の意識が現代とは格段に違っていた。

続きを読む 若者の『恋愛離れ・おひとりさまの増加』の現象を起こしている原因の考察