総合評価 80点/100点
ファティマ第三の予言に基づく“シンプルプラン”は、御前会議の支配階級が主導する特殊能力を持つスペックホルダーの全滅作戦という建前だが、その真の計画は『先人類による新人類の絶滅作戦』にあった。
地球を私物化して環境汚染と精神破壊を続け、同類で憎み合い殺し合う劣等な新人類の歴史を終焉させるため、先人類であるセカイ(向井理)、青池潤の外観を持つ女(大島優子)、ユダ(遠藤憲一)が、冥界の門を開いて現在の地球と人類を一瞬で壊滅させる『ソロモンの鍵』を手に入れようとする。
ストーリーそのものは『ガイア思想・エコロジー思想・原罪の性悪説・最後の審判(一神教の裁き)の変奏』であり、こういった終末論的な物語では定番化したスタイルではある。地球を一つの生命体と見なすガイアの立場から、人類を『過ちの歴史から学習できない有害無益な劣等生物種』と見なす先人類は、今までも何度も人類が支配する地上を崩壊させてリセットを繰り返してきたという設定である。
太古の地球において、圧倒的なスペックを持つ先人類は、疑うことや支配することを知らない精神の純潔さゆえに、狡知と計略、数の力に秀でたスペックを持たない新人類に一度絶滅させられたという屈辱の遺恨を持っている。
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総合評価 90点/100点
誰もが知る竹取物語の冒頭は、“今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山に交じりて竹を取りつつ、万のことに使ひけり。名をば讃岐造(さぬきのみやつこ)となむ言ひける”より始まる。アニメ映画の『かぐや姫の物語』でも、竹取の翁(おじいさん)が竹林で光り輝く竹を見つけて、その手前に伸びてきた竹の子の中から“小さな美しい姫”を拾い上げる場面から始まる。ストーリーは『かぐや姫と捨丸(すてまる)の輪廻転生を思わせる恋愛・かぐや姫の都嫌いと自然回帰願望』を除いては、ほぼ原作を忠実になぞっている。
着物をまとった小さな姫はするりと媼(おばあさん)の手をすり落ちると、瞬く間に赤ちゃんへとその姿を変え、姫を『天からの授かり物』と信じる翁と媼の手によって目に入れても痛くないほどに大切に育てられていく。自然の野山を自由に駆け回って、まるで雨後の竹の子のように急速に成長していく女の子は、山に生きる子供達から“たけのこ”と呼ばれて可愛がられ、あっという間に美しい少女へとその姿を変えていった。
アニメーションは画用紙に書き殴ったラフなスケッチ画のような線質を意図的に出しているが、『人物の表情の複雑さ・墨水画風に色を加えたような色彩・ダイナミックかつ独自性のある動き』に新しさは感じる。
かぐや姫にしても絶世の美女であることを分かりやすい『アニメキャラ(美人だったり可愛い子だったりが一目で分かるキャラ)』の形で創作しておらず、キャラクターとしての存在感はもののけ姫やナウシカ、千と千尋のヒロインなどと比べるとやや落ちるだろうし、『古典世界の住人』としての輪郭の曖昧さ、実在感の弱さをわざと残しているのではないかと思われる。
翁は姫の神通力のおかげなのか、竹林に行く度に砂金の黄金がぎっしりと詰まった竹を見つけて、次第に財力を蓄えていく。美少女へと成長してきた姫を見ている翁は、このまま辺鄙な山奥に埋もれていたのでは、姫に幸福で華やかな人生を歩んでもらうことは不可能だと悟り、蓄財した膨大な砂金を使って『京の都(みやこ)』に出ることを計画する。
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総合評価 70点/100点
ルームメイトになった女性が、異常に独占欲が強くて自制心の働かないサイコパス(精神病質者)だったという話だが、ネタバレしてしまうと面白みのなくなるストーリーでもある。過去の性的虐待のトラウマと関連したプロット自体はかなり使い古されたもので、サイコホラーサスペンスの定番になって久しいが、先入観なく見れば心理的な切迫感の感じられるホラー映画としての怖さは所々にある。
派遣社員の萩尾春海(北川景子)は、交通事故に遭って片足を骨折してしまい、仕事を辞めざるを得なくなる。収入が途絶えることになりこの先の生活に不安を覚えていた春海だったが、入院中に話があって親身に接してくれた看護婦・西村麗子(深田恭子)がルームシェアを申し出てくれた。
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総合評価 80点/100点
『悪の法則』の英語版の原題は“The low of evil”ではなく“The counselor”なのだが、カウンセラーだと日本語の語感では『心理的な問題や悩みを抱えた人たちを各種の検査・理論・技法を用いてケアする専門家』といった意味に受け取られてしまうため、題名を『悪の法則』と変えているのだろう。
作中で主人公のマイケル・ファスベンダーが演じる弁護士は、マフィアの強面の連中から『カウンセラー』と呼ばれて一目置かれている。冒頭でフィアンセのローラ(ペネロペ・クルス)と、猥談でいちゃつくベッドシーンが5分くらいのかなり長い間尺で流されるが、優雅で豊かでエロティックなセレブの日常の背後を流れる『ブラックマネーの魅惑・恐怖』を描いた映画であり、ローラとの幸福な日常はGreed(強欲)によって侵食され破壊されてゆく。
カウンセラー(マイケル・ファスベンダー)はまっとうな弁護士としての仕事の稼ぎで満足することができず、友人の陽気で太っ腹な実業家ライナー(ハビエル・バルデム)が持ちかけてきたメキシコ・マフィアが管轄するコカイン密輸に関連した法務処理の相談役の仕事を引き受ける。
ライナーは美男美女を高級車をずらり並べた豪邸に集めて、飽食とセックス、娯楽に明け暮れ、地元の顔利きとして権勢を振るっているが、自らの栄耀栄華がいつ終わってもおかしくない刹那のものであることを裏社会の住人として自覚してもいる。
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総合評価 90点/100点
明智光秀が謀反を起こした『本能寺の変(1582年)』に倒れた織田信長の後継者を誰にするのかを決めるため、織田家の家老と重臣たちが大挙して清洲城に集結して『清須会議』と呼ばれることになる評定を開くことになった。
圧倒的なカリスマと専制権力で織田軍を強力に指揮していた信長の想定外の死、更に信長に続いて明智との戦いに散った長男・織田信忠(中村勘九郎)の死によって、織田家の跡目を継ぐ資格のある子息は次男・織田信孝(坂東巳之助)と三男・織田信雄(妻夫木聡)とに割れることになった。
三谷幸喜の喜劇映画のオールキャストに近い出演陣だが、笑いやユーモアの要素もふんだんに取り入れながら、『列伝的な歴史物語の面白さ』を十分に抽出している。織田信長・豊臣秀吉・柴田勝家などの戦国武将の伝記が好きな人、清須会議に関する大まかな歴史の知識がある人なら、それだけで時代劇映画としての『清須会議』のストーリーを史実との違いも含めて楽しめる。
何より一人一人の歴史上の武将・人物のキャラクター(性格気質・生き方)として知られている特徴を、大げさに強調して演技させているのが『色のついた時代劇』としての滑稽感や納得感を強めている。
猛将として知られる柴田勝家(役所広司)は、織田信長に初期から随従して殆ど全ての戦で先陣を切り、京都平定(将軍の足利義昭追放)・加賀一向一揆鎮圧の数々の戦で勲功を上げた功労者で、元々は織田家中における格付けは羽柴秀吉よりも圧倒的に上だった。
年齢・軍功・激しい気質において家中で抜きんでていた柴田勝家に対し、若年の羽柴秀吉(木下藤吉郎)は『親父殿』という敬称で呼んでぺこぺこ追従していたが、朝倉義景・浅井長政を攻める辺りから秀吉の戦上手の才覚は開花し始め、個人の武力や気迫では勝家に劣るものの、政治家・指揮官・管理者としての才能や先見性では、次第にただ無骨で忠義なだけの勝家は秀吉の足元にも及ばなくなっていく。
映画の終盤、羽柴秀吉(大泉洋)はねね(中谷美紀)と共に、『清須会議』で傀儡の幼児・三法師(織田信秀)を担いだ秀吉にまんまとやられて憤慨する柴田勝家の馬前に進み出て、田んぼの泥道で土下座しながら『今の織田家があるのは親父殿のお蔭でございます。今後とも織田家のためのご尽力をお願いいたします』と殊勝に述べて、自らがいまだ勝家の下位者であり続ける(本気で三法師を主君として敬い続ける)ような演技をする。
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総合評価 75点/100点
『SPEC』の最終シリーズだが、未詳(ミショウ)の部署で超能力保持者であるスペックホルダーの絡んだ事件を捜査する当麻紗綾(戸田恵梨香)と瀬文焚流(加瀬亮)が、世界の終末を予告する『ファティマ第三の予言』が引き起こす人類生存戦争に巻き込まれていく。
死者を冥界から引き戻してそのスペック(超能力)を自在に活用できる当麻のスペックは強力だが、冥界にアクセスして死者を連れ戻そうとすると当麻の瞳は暗闇のような空洞に変化し、次第に人間としての自我も希薄になっていく。
死んだスペックホルダーを呼び戻したり戦闘のためのスペックを使ったりする度に、人間ではない何物かに変貌しようとしている当麻の変化を間近で見ている瀬文は、『生身の人間としての限界』にチャレンジし続けることで、『スペックに対抗し得る人の強さ』を立証し当麻にスペックを用いることをやめさせようとしている。
既に瀬文はどんなに瀕死の重傷を負っても死なない、短期間で復帰して戦闘に参加することもできるという意味で、人間ではない驚異的にタフなキャラクターなのだが、『SPEC 結 漸ノ篇』でも一(にのまえ)に負わされた重症をものともせずに病院を飛び出し、当麻と一緒に戦列に復帰している。
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