総合評価 82点/100点
人類に侵略戦争を仕掛けてきた昆虫型生命体フォーミックの第二次侵攻に備えて、世界中から集められた資質・能力のある少年兵士たちが『バトルスクール』で鍛えられて前線に送り込まれる。宇宙戦争のための知識と技術、戦略を学ぶバトルスクールは厳格な階層制が敷かれているが、『戦いを終わらせる選ばれし者』として召集されたエンダー・ウィッギン(エイサー・バターフィールド)は短期間で頭角を現して、理不尽なしごきや嫌がらせを仕掛けてくる先輩を逆に打ちのめして恫喝する。
小柄な体格とひ弱そうな外見を持つ少年エンダーだが、冷徹な判断力と別格の戦闘・戦略のセンス、不屈の自尊心を持っており、バトルスクールに集められる前から『やられたら相手が反撃不能になるまでやり返すの戦術』を徹底している。バトルスクールのクラスを牛耳る支配的な先輩に挑発されて、バスルームでタイマンを張ることになるが、頭部に想定外の大きなダメージを与えてしまい、先輩を脳死状態に追いやってしまう。
エンダーは簡単に同情心を抱くことのない冷徹な少年であり、仕掛けてきた相手(初めに制止しても攻撃をやめない相手)を打ちのめすことに対する罪悪感や後ろめたさを感じたことはなかったが、偶然とはいえ先輩を死にまで追い込む極度の攻撃を加えたことに対して、本当にそこまでやる必要があったのかという心の迷いを初めて感じる。
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総合評価 82点/100点
古代ローマ帝国の最盛期、『永遠の都』と称されたローマの南東約250キロにあるポンペイは、紀元79年、ヴェスヴィオ火山の大噴火と大地震によって都市が火砕流と火砕サージ(高温の火山灰・火山性ガス)に呑み込まれて壊滅した。
ヴェスヴィオ火山の噴火の後にも、大量の火山灰・岩石・土砂が数日間にわたって降り続き、ポンペイは地中深くに埋もれてしまい、皇帝ティトゥスの使者が目にしたのは火炎が燻るだけの灰色の荒野だったという。首都ローマも3日間に及ぶポンペイからの延焼被害に襲われたとされる。火山噴火で死亡したポンペイの被害者たちの姿は『遺跡に残された人型の空洞(鋳型)』を元に石膏像で復元されており、映画のプロローグにも灰色に炭化した焼死体の像(静態的な像でグロテスクなものではない)が使われている。
ポンペイに住んでいたとされる約2万人の人々のうちの約1割がこの大噴火で死亡したとされるが、映画『ポンペイ』のヴェスヴィオ火山噴火の映像表現は、ポンペイ市民の死因が『窒息死』だけではなく火砕サージによる『焼死』が多かったという新しい研究の知見を応用して、都市炎上の激しさを表現している。
ポンペイ全体が段階的に火災サージで呑み込まれて燃え上がる中、大きな岩石が無数に雨のように降り注ぎ、火山灰も大量に降り積もってポンペイが地中に埋もれていく。
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総合評価 85点
特殊能力を持つミュータント(突然変異)とミュータントを恐れる人類が殺し合う未来を変えるために、ウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)が過去にタイムトリップして歴史を変更しようとする。
キティ・プライドの持つ能力は、相手の精神を時間を超えて過去や未来に送り込むことができるというものだが、通常の人の精神力では数時間から数日感の時間転移にしか耐えられずに発狂する。人類が『センチネル』というミュータント殺戮のロボット兵器を開発することになる『歴史の転換点』は1973年であり、数十年間の精神のタイムトリップに耐えられるのは不死の身体を持つウルヴァリンだけであった。
人類を滅亡させかねないという『ミュータント脅威論』を掲げてセンチネル開発を推進しているのは、小人症のボリバー・トレスク博士だが、トレスク博士は捕獲したミュータントからDNAを採取するための人体実験を繰り返している。そのことを知って怒りに燃えるミスティーク(ジェニファー・ローレンス)は、『トレスク暗殺』を計画するが、トレスクを殺害してしまえば、ミュータント脅威論が議会で承認されてミュータント排斥の世論も沸騰することになる。
センチネル開発には何にでも自在に姿を変えられるミスティークのDNAが必要なのだが、現時点の歴史では『トレスク暗殺→ミスティーク逮捕とDNA採取→議会でのセンチネル開発予算の承認→センチネルの完成』という流れがあり、センチネルを作製させないためにはミスティークのトレスク暗殺をやめさせなければならない。
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総合評価 76点/100点
原作である松岡圭祐の『万能鑑定士Qの事件簿(万能鑑定士Qの推理)』は、あらゆる分野・芸術・骨董の網羅的な知識(驚異的な記憶力)を持っている美人鑑定士の凛田莉子と角川書店の若手イケメン記者の小笠原悠斗が活躍するライトノベル風のミステリー小説。松岡圭祐はカウンセリングとSFチックなクライムサスペンス(政治・経済・宗教まで何でも絡む)を融合した『臨床心理士シリーズ』からちょこちょこ読んでいたが、キャラクターの造形とストーリーの拡張の仕方が上手い作家である。
万能鑑定士Qシリーズは、映像化を見越したようなミーハーな人物設計や本のカバーイラストとは裏腹に、ミステリー部分の謎解きや様々なジャンルに及ぶ『芸術品・流行・文学や映画・印刷技術(印刷物)・ファッション・フランス料理』などに関するトリビアは意外にしっかりしていて面白い。
著者の資料収集・リサーチの手間は相当なものだと思うが、ある意味では『自分が興味関心を覚えた分野・物事の細かな情報』を起点にしてミステリー化する才能に恵まれているのだろう。小説は一冊一冊全く異なる事件・テーマ・トリビアを扱っているので飽きが来ないが、ミステリーの謎解きや蘊蓄のネタは面白いけれど小粒なものが多いので、映像化に向いているかは微妙なところもある。
映画版の『万能鑑定士Q モナ・リザの瞳』は、ルーヴル美術館のアジア圏代理人・朝比奈(村上弘明)から鑑定能力を認められた凛田莉子(綾瀬はるか)が、『モナリザの真贋の鑑定』をするためにトレーニングを受けていく中で、その鑑定能力が低下して失われていくという話がメインになっている。
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総合評価 78点/100点
北海道の函館市の鄙びた街を舞台に、生き甲斐を喪失して彷徨う孤独な男と暗く貧困な家庭環境に耐えて春をひさぐ女との恋愛を描く。
トタン屋根とプレハブ小屋のような家屋、仕事のない地方での貧困と売春(ピンク小屋)、家や親の後見がない女性の悲哀、ダイナマイト発破の危険な3K仕事、介護保険がない時代の自宅介護、ヤクザ崩れの地元実力者の愛人の囲い込みと恫喝など、原作の時代設定は平成の現代というよりは昭和40~50年代辺りをイメージしたものなのだろうか。
山の発破の仕事で起こった死亡事故に責任を感じている達夫(綾野剛)は、仕事を辞めて世捨て人のような一人暮らしを静かにしている。達夫は酒を飲んだりパチンコを打ったり散歩をしたりしながら、気ままで自堕落な生活を送っていたが、ある日、パチンコ屋でライターを貸してやったことが縁で拓児(菅田将暉)という同世代の遊び人風の青年と知り合いになる。
拓児には暴力事件を起こして少年院に入院していた前歴があるが、裏表のない気のいい奴ではあり、ライターのお礼に達夫に自宅で昼飯を食べさせてやるから来いと誘う。季節は暑い夏、屋根が錆びて古びたプレハブの家屋の奥の部屋から、拓児の姉の千夏(池脇千鶴)が汗ばんだ肌を露出した無防備な下着姿でタバコを銜えながら姿を現し、達夫は目のやり場に困っている。
女優の池脇千鶴は久しぶりに見た気がするが、『そこのみにて光輝く』では中年女性の熟れた色香を漂わせる池脇千鶴の肉のついたヌード・絡みありの演技が、昭和の日活ポルノロマン的な郷愁と悲哀を湛えている。
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総合評価 84点/100点
これから起こる事件や出来事を夢で見ることができる『予知夢の能力』を持つ引っ込み思案な小学生の古藤結衣子(木村真那月)と、サイコパスっぽい部分もある先生の武戸井彩未(北川景子)を中心にしたコメディサスペンス。
ドラマシリーズからのスピンオフだが、個人的無意識が夢に投影されるとしたジークムント・フロイトや集合無意識(普遍的無意識)が夢のイメージや元型になって現れるとしたカール・グスタフ・ユングの『夢分析の理論』を前提にしながら、コミカルタッチの推理小説のような面白さを持つような展開が考えられている。
クラスにやってきた転校生の渋井完司(マリウス葉)を、みんなが転校してくる前から夢で見たことがあるといって騒ぎになる。大人びた雰囲気の渋井完司はすぐにクラスでリーダー的な役割を果たすようになり、父親(六角精児)が路上の屋台でほそぼそとハム巻を作っている女子生徒の井上さんをみんなで応援して、そのハム巻を大ヒットさせ店舗を持てるまでに発展させていく。だが、そこには『成功させてから突き落とす(個人の努力で運命を変えることなどできない)』という渋井の自己理論の証明のための策略があった。
クールなイケメンの渋井は、“悪夢ちゃん”こと古藤結衣子の夢に、理想の男の子の象徴である『夢王子』として登場してくるが、この『夢王子』の原型は武戸井先生の夢にでてきていたGacktが演じる夢王子である。夢を研究する心理学教授である古藤の祖父の下で、野心的な助手を勤めていたGacktは、ドラマ版で古藤結衣子の父親であることが明らかにされている。そして映画版ではそれ以前のクールなキャラから転じて、結衣子との父子関係を自然に認めてふれあいを楽しんでいたりする。
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